第17章 最終章・君は小生の宝物
「(こ、これは……)」
次にマリアンヌの目に飛び込んできたのは、長い長い並木道に咲き誇る薄いピンク色の小さな花たち。
その、見事な咲きに、並木道はピンクのトンネルの様だ。
「(アンダーテイカーさん…この花は、もしかして……)」
「そう…桜だよ。」
「(桜って……ここはニューヨークではないのですよね?となるとここは英国のどこですか?)」
桜は春の日本に咲く花だとアンダーテイカーから聞いていた。今聞いた話だと、自分達はニューヨークには行かずに戻ってきたのだろう。
となると英国にいるはずだと思ったのだが…
何故英国に日本の桜が……
マリアンヌにはさっぱりわけが分からずポカンとアンダーテイカーを見つめる事しかできなかった。
「ヒッヒッ…まるで鳩が豆鉄砲くらった様な顔だね〜そんなマリアンヌも可愛いよ。話はまだ続きがあるんだ。ここは英国ではない。」
「(えぇ…??)」
「君の魂の叫びを聞き、その魂が君の身体に溶け込む事態に驚いていたら、棚から1冊の本が落ちたんだ。誰も触ってないのに勝手に落ちたんだ。不思議だろう?で、その落ちて開いた本のページには、日本の桜が描かれていたんだ。これもなにか運命的だと思ってね…小生はマリアンヌの延命処置を施すと、すぐに英国の店を閉めて日本へ向かったんだ。」
「(で、では…ここは……日本ですか?)」
「そうだよ。前に君が日本に行ってみたいと言ってたのを思い出したからね。心機一転、日本の歌舞伎町に新たな店を構えて再スタートしたんだ。どこの国でも情報屋は儲かるし、日本の文化も面白い。きっとマリアンヌも気にいるよ〜」
「(そ、そうだったのですか……)」
大怪我を負って眠っている間にアンダーテイカーとの暮らしのスタイルはガラリと変わっていた。
別に日本に住む事が嫌なわけではないが、突然の事でマリアンヌの頭は混乱状態だ。