第14章 アウローラ学会
階段を上り終え、辿り着いた場所は1等旅客用喫煙室だった。
豪勢な扉の前には見張りと、きめ細やかな細工が施された美しい水差しを持ったウエイターが1人。
アンダーテイカーは2人に軽く手を上げると、扉の前の男2人は頭を下げた。
ここは顔パスの様だ。
ーガチャー
豪華で重々しい扉を開くと、中には先程入り口で注がれた“完全浄化水”のグラスを持ち、談笑し合っているいかにも富裕層の人間達。
みなグラスや料理を片手に、これから始まる例の“研究発表会”にむけての立食パーティーを楽しんでる様だ。
そして入室すると、会員バッチを胸に付けた恰幅のいい男がズイッとマリアンヌの前に立ち声をかける。
「初めての方かな?」
アンダーテイカーはバッチを付けている。
しかし、マリアンヌは付けていないため、その男はマリアンヌの顔を凝視しながらその“定められた”挨拶を待った。
マリアンヌはゴクリと生唾を飲み込みながら隣を見ると、今にも笑い出しそうに必死にピクピクと堪えてるアンダーテイカーの姿。
しかし、やらねばならぬのだ。
ここで自分だけが退場になってしまったら大変危険だ。
マリアンヌは決心をしたのかアンダーテイカーに向かって小さく頷いて見せる。
「彼女は喋ることができない。悪いけど、筆談で許してやっておくれ…」
「うむ……」
すると、マリアンヌはおずおずと胸元から小さな紙とペンを出すと、震える手で書き綴った。
「(か、か、完全なる胸の炎は…)」
「何者にも消せやしない」
男はマリアンヌに合言葉を返す。
「(我ら……)」
「我ら…」
マリアンヌは持っていた紙とペンをグッと握り覚悟を決めた。
「(フェ…フェニックス…!!!!!)」
「(………………)」
片足立ちになり両腕は変な角度をつけて広げる。
このポーズにいったい何の意味があるのだ。
チラリと視線をアンダーテイカーに向けると彼も同じポーズだ。
それを至って真面目な顔で見つめる男。
合っているのか…?
これで間違いは無いのか…?
マリアンヌはフェニックスポーズをとりながらジワリと変な汗がこめかみを伝った。