第14章 アウローラ学会
「(あの…私…できる事ならセバスチャンさんとは…戦って欲しくありません…)」
「??」
「(そ、それは決して彼等が好きだからとかではありません…私は…貴方が…アンダーテイカーさんが側にいてくださらないと…もう生きていけません…だから…だから…アンダーテイカーさんにもし何かあったら…って思うと…私…わたし……)」
気づけばヘーゼルの瞳からは大粒の涙が溢れていた。
窓から差し込む月明かりに照らされて、それはキラキラと輝いている。
「マリアンヌ……」
自分の身を案じて涙を流すマリアンヌ。
そんなマリアンヌの涙の一粒まで心から愛おしい。
アンダーテイカーは、愛しすぎるマリアンヌに擽られる様な感覚が全身を巡ると、震える手をそっと握り、触れるだけのキスをした。
「ありがとうマリアンヌ…こんな素敵なレディにそんな風に想われている小生は、世界で1番の幸せ者だ。」
「(アンダーテイカーさん……)」
マリアンヌは涙を流しながら首を振るが、アンダーテイカーはそれを否定する。
「そんな事はない。小生は世界で1番幸せ者だ。それは絶対に誰にも否定させないよ。それが、例えマリアンヌ自身でもね?」
柔らかく微笑みながらアンダーテイカーは宝石の様に光り輝く涙を指で拭ってやった。
「(アンダーテイカーさん…)」
自分がアンダーテイカーの存在無しでは生きていけないのと同じ様に、アンダーテイカーも自分の存在で幸せを感じてくれている。
それは今までに何度も何度も確認し合ってきた事だ。
でもアンダーテイカーとマリアンヌは死神と人間。もともとは交わる事の無い、生きる世界の全く異なる2人だったのだ。それ故、何度確認し合っても不安が尽きる事は無い。
しかし、不安になれば今の様に何度だって確かめ合えばいいのだ。アンダーテイカーの言葉に少し落ち着きを取り戻すと、マリアンヌは静かに頷いた。
「いい子だねマリアンヌ。愛してるよ。それじゃあ…そろそろ行こうか?」
「(…はい…)」
すると、アンダーテイカーはマリアンヌのドレスの裾を元に戻し、手を取り立たせてやった。