第14章 アウローラ学会
「(アンダーテイカーさん…これは…)」
「使い方はこの間教えた通りだよ?ちゃんと覚えているかい?」
「(は、はい……)」
アンダーテイカーが荷物から出したもの。
それは、マリアンヌでも扱える小型の拳銃だった。
それを外から見えぬ様、右のレッグホルスターには銃を、左には替えの銃弾と護身用のナイフを入れ、マリアンヌの脚に装着してやった。
「何度も説明したけど、例のモノは頭部の破壊で動きを止める。」
「(………)」
「もちろん小生も側にいる。でも、どこでどんな邪魔が入るか分からない。現に、やっかいな現役の死神がこのカンパニア号に乗りこんでいるんだ。それに、この2日間、会うことはなかったけど、きっと伯爵達だってこの船に乗っているだろう…」
「(シエルさん達も…ですか?)」
「あぁ…おそらくね…アウローラ学会も少しずつだけど活動も規模も派手になってきている…裏の情報を掴んでいてもおかしくはない…」
「(そうですか……)」
もし、シエルやセバスチャンがアンダーテイカーの邪魔をしてきたら、アンダーテイカーはためらうことなく彼らと戦うのだろうか。
マリアンヌは右のレッグホルスターに装着された拳銃に手をあてながら俯いてしまった。
「マリアンヌ…小生が、伯爵や執事君と戦う事になるのがイヤなのかい?」
「(え……それは…)」
心の中を読まれてしまい思わず口籠ってしまう。
シエルやセバスチャンの事は、その正体を知るまで普通の人間だと思っていたマリアンヌ。
それ故、どことなく子供っぽくなかったシエルだが、彼が悪魔を従える“女王の番犬”だったなんて誰が想像できただろうか。
マリアンヌは切り裂き魔事件で悪魔のセバスチャンが、デスサイズを振るう死神のグレル・サトクリフと互角に殺り合っているのを鮮明に覚えている。
そのため、できれば彼らとは対峙したくなかった。
「(あの…アンダーテイカーさん……)」
マリアンヌの震える指が、か弱くアンダーテイカーの名を呼ぶ。
「…ん?」
アンダーテイカーは、不安に揺れるヘーゼルの瞳を柔らかく見つめながらマリアンヌが話し出すのを待った。