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君は小生の宝物/葬儀屋/黒執事

第13章 愛しているから不安なのです






「………」


ロナルドはジョッキに口をつけながら考える。




ソフィー・スミス。


わざわざ名前を聞かなくたって、ロナルドはこの女の名前を知っていた。
何故ならそれは、先程目を通した分厚い回収リストに載っていた人間の1人だったからだ。


若くて美人な女ならリストでチラリと見ただけでもこうして名前が出てくる。

否、出てきてしまう。

それ程まで自他共に認める女好きのロナルド。

そうなると、尚更気になってしまうのが、出航前にマリアンヌと呼ばれていた貴族の令嬢のような出で立ちの女だ。


ついさっきリストで見かけただけの女でさえこうして名前が出てくるのだ。


ロナルドは気晴らしのつもりでここまできたのだが、ますます頭の中はマリアンヌの事でいっぱいだった。



「ねぇ〜??どうしたの?難しい顔して?」



ソフィーがイスをズリズリとロナルドの方に寄せて顔を覗き込んでくる。



「え?あぁ!ごめんごめん!なんでもないよ?」



ソフィーはロナルドの事がよっぽど気に入ったのか、両肘を円卓に乗せながらわざと胸元の谷間が見えるように上半身をひねってみせた。

ロナルドの目に飛び込んできたのは、ボタンが余計に1つあいたブラウスの隙間から覗く豊満な胸の谷間。


軟派なロナルドはその絶景に口角を上げると、ここにやってきた目的を改めて思い出した。


「賑やかなお酒の席に難しい顔は似合わないわ。ほら、もう1回乾杯しましょ。」


「おーう!ねぇちゃん良い事言うじゃねぇか!ホラ、兄ちゃんも嫌な事は忘れてパーッと飲もうぜ!!」


「そうっすね!!じゃあ改めてもう1度!カンパーイ!!」


そう、ここには気晴らしにやってきたのだ。


その上明後日は嫌でも夜通しでの回収作業が待っている。しかも、とある奇怪な現象の調査までしてこいとの命令だ。


それまでは楽しまなきゃ損だろうと、自身に言い聞かせると、ロナルドは2回目の乾杯をし、豪快に飲み始めた。



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