第13章 愛しているから不安なのです
「でも、それ程までに君を愛しているんだって事は分かっておくれ。例え君が不慮の事故で死んでしまっても、それをなかった事にできる様な研究を今している。できるなら、年老いて死んだ後も魂だけは手元に置いておきたいとも思っている。小生はマリアンヌがお婆ちゃんの姿になったって愛してるよ。例え、年をとって身体を繋げる様な愛し合い方ができなくなったって、愛してる。でもマリアンヌがずっと若いままでいたいと言うなのら、その願いを叶えるために小生は全力で研究をするよ。」
「(アンダーテイカーさん……)」
惜しみなく降り注がれる愛の言葉に、潮風で冷たくなったマリアンヌの頬はジワジワと熱くなる。
「小生の想いの深さは…分かってくれたかい…?」
「(…………)」
それは十二分に理解できた。
それ故マリアンヌは少し憂いを帯びた瞳を見つめながらコクリと頷く事しかできなかった。
「マリアンヌはお婆ちゃんになっても可愛いよ。小生が保証をする。」
「(あ、ありがとうございます…)」
愛しい相手が老いない存在という事実は、女であるマリアンヌにとってはとても不安にさせられるものだったが、今のアンダーテイカーの話で少しだが心が軽くなった。
だが、できるならずっと自分も若いまま側に居たいと思ったのは言うまでもないだろう。
「少し風が冷たくなってきたね。中に入ろうか。」
「(は、はい……)」
アンダーテイカーはマリアンヌの肩を抱くと、そのまま船内へと入っていった。
そしてちょうどその頃、2等の客室のベッドにゴロリと寝そべり怪訝な顔をしている男が1人。
「ん〜、ひっかかるな〜…」
そう、死神派遣協会で回収課に所属している現役の死神、ロナルド・ノックスだ。
ロナルドは出航前にぶつかった女、マリアンヌの事を考えていた。