第10章 その死神、激情
「マリアンヌ…本当にすまなかった……だからお願いだ…小生を置いて出ていったりしないでおくれ……小生はもう君のいない日常など考えられない…どうか、小生をひとりぼっちにしないで欲しい……」
マリアンヌの膝に顔を埋めて泣きながら懇願をするアンダーテイカー。
「(アンダーテイカーさん……)」
マリアンヌだって、愛するアンダーテイカーの側を離れていく事などできないのだ。
でもアンダーテイカーは、言いつけを破り、裏切るような行為をしたこんな自分を許してくれるというのだろうか。
マリアンヌは抱きついているアンダーテイカーの腕をはがしてその手を取ると不安な想いを抱えながら指で書き綴る。
「(アンダーテイカーさんは、こんな私を…許して下さると言うんですか?理由はどうであれ、私は言いつけを破り、裏切るような行為をしたんです。…こんな私を許してくれると言うんですか?)」
するとアンダーテイカーは反対の手でマリアンヌの涙を親指で拭いながら真っ直ぐと見つめ上げて答える。
「許すも何も、マリアンヌは何も悪くない…そもそも君がパン屋で薬酒を飲む事になったのは小生が昨夜君に無理をさせたせいなんだ…だからマリアンヌは謝る必要なんてないんだ…」
「(では…では…私は…これからもアンダーテイカーさんの側にいてもいいんですか…?)」
「当たり前だ…小生は…もうマリアンヌがいなくちゃ生きていけない…どうか側にいて欲しい…」
その言葉にマリアンヌは安堵すると、緊張の糸が切れたのか、目から流れる涙は洪水の様に溢れ、しゃくりあげながら泣き出した。
「(うっ…うぇ……うぅ…アンダーテイカーさん!!)」
そして、マリアンヌもベッドから降りると、床に膝をついているアンダーテイカーの胸に飛び込み、その胸に顔を埋めながら声なき声を上げて泣きついた。
「ごめんよ…ごめんよマリアンヌ…お願いだ…こんな小生を許しておくれ……」
アンダーテイカーはマリアンヌを抱きしめながら、頭を撫でながら、何度も何度も謝罪の言葉を繰り返した。