第10章 その死神、激情
「(あの…アンダーテイカーさん…本当にごめんなさい…私、よく覚えていないんです。なんだか自分の身体ではないみたいに熱くなって、でも意識がはっきりとしなくて、私…この部屋でアンダーテイカーさんが触れてくれてるものだとばっかり思ってあんなことを……でも…でも…事実は変えられません…)」
気づけばマリアンヌの目からも涙が溢れ、ポタリポタリとアンダーテイカーの手のひらに涙の雫が落ちていく。
「(私が愛しているのはアンダーテイカーさんだけです!でも…貴方を裏切ってしまったのは事実です……ごめんなさい…謝って済む問題ではありませんが、本当にごめんなさい……もう、私の事を追い出してくださっても…構いません…)」
……そんなの嘘だ。
アンダーテイカーの側から離れていく事などできない。
でも、愛するアンダーテイカーを傷つけたまま、側にいる事もできない。
だからもう、後はアンダーテイカーの想いのままにする事くらいしかマリアンヌには詫びる方法が思い浮かばなかった。
「マリアンヌ……?何故そんな事を言うんだい…小生は…小生は…」
お互い涙を流しながら見つめ合う。
「…間違っていたのは小生だ。小生は、マリアンヌの話を聞こうともしないまま勘違いをして、あの害獣への怒りを君にぶつけてしまった…あんな乱暴な真似、大切なマリアンヌにするなんて…どうかしていた…」
「(…アンダーテイカーさん……)」
「謝罪をして許しを乞わなくてはならないのは小生の方なんだ……マリアンヌ、本当にすまなかった……もう二度とあんな事はしないと誓う…だから…だからどうか小生の側からいなくなるなんて言わないでおくれ……」
「(……アンダーテイカーさん…)」
すると、アンダーテイカーは再びマリアンヌの膝に顔を埋めてしまった。
肩はかすかに震えて、声を出して泣くのを我慢している様だ。
マリアンヌはアンダーテイカーから愛想を尽かされ、追い出されるとばかり思っていたのだ。
まさかのアンダーテイカーの姿に、マリアンヌはどうしたらいいのか分からなくなってしまった。