第8章 死神との生活
「美味しそうに食べてるところも可愛いね〜」
「(!!!)」
その言葉にドキンと心臓が跳ねる。
パフェの向こう側にいるアンダーテイカーを見れば、片肘で頬杖をつきながらマリアンヌを見つめていた。
前髪で隠れていない右目は少し細くなり、微笑む様にマリアンヌを見ている。
薄暗い店内で淡く光る黄緑色の燐光が堪らなく妖艶で美しい。
その美しい死神が見つめているのが自分だと思うと、心臓の鼓動がみるみる速くなるのを感じる。
きっと今の自分の顔は真っ赤になっているに違いない。マリアンヌは熱くなってしまった頬を必死に冷ますかのように次々にアイスを口に入れていった。
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「マリアンヌ」
食事を終えて店に戻ると、アンダーテイカーはマリアンヌの右手を取り、ポケットから小さな箱を取り出すと、右手の上にそっと握らせた。
「(………………)」
自分の右手に渡された物が何なのか分からず、疑問符を浮かべてマリアンヌはアンダーテイカーを見つめた。
「これは、小生からマリアンヌへのプレゼントだ。」
プレゼント?
今しがた行ってきた食事が祝い兼プレゼントではなかったのかとマリアンヌはさらにわけがわからなくなりそのままフリーズしてしまった。
「ヒッヒッ、そんな顔してないで開けてごら〜ん?」
「(………………あっ!)」
言われるがままその小さい箱を開けると、中に入っていたのはキレイな髪飾りのバレッタだった。
「これはニナに作って貰った髪飾りなんだけど、素敵なレディ・マリアンヌのために小生が少しリメイクしたんだ。どこだか分かるかな?」
アンダーテイカーは箱からバレッタを取り出すと、親指と人差し指で挟んでマリアンヌの顔の前で見せてやった。
黒のレースとリボンで美しく飾られたバレッタだ。
だが、マリアンヌはすぐにアンダーテイカーがしたリメイクに気がつく。
「(…あ、アンダーテイカーさん…もしかしてコレ…)」
マリアンヌはバレッタの中央に装飾された3つの黒真珠を指さした。