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君は小生の宝物/葬儀屋/黒執事

第8章 死神との生活






「正〜解〜。」


気づいてもらえて嬉しかったのか満面の笑みを向け、空になった箱をマリアンヌの手から取りポケットにしまうと、バレッタを持たせてやった。



美しいレースとリボンの中央で凛と輝く黒真珠。



でもこれにはもう1つ、秘密があった。



「この黒真珠は小生がいつもつけてる首飾りから取って付けた物なんだ。」


「(……え?)」


マリアンヌは驚いた。


確かにそう言われてみれば、アンダーテイカーはいつも黒真珠の長い首飾りを2連にして身につけている。


いつも身につけているということは、大切で大事な物に違いない。実際によく見てみると、目の前の真珠は美しく照り輝いている上に、形も歪みのない球状で誰がどう見ても高級品だ。


そんな、そんな大切な物を自分なんかが貰うなど、とてもできない。


「(あ、あの…そんな大切な物、私、受け取れません…)」


マリアンヌはブンブンと首を振ってバレッタをアンダーテイカーに返そうとする。


「どうしてだい?」


アンダーテイカーはマリアンヌが受け取れない意味が分からず、首を傾げてしまう。


「(こ、こんな私が…こんな高価で大切にされている物を受け取れるわけがありません…私はアンダーテイカーさんが言ってくれる様な美しいレディでも、素敵なレディでもありません!私は…私は不貞の末に産まれた使い古しの汚れた娼婦なんで……)」



「マリアンヌ。」



最後まで書き終わる前に、マリアンヌはアンダーテイカーの人差し指によって唇を塞がれてしまった。
それと同時に書き綴る右手もピタリと止まってしまう。


「マリアンヌはもうサラ・トレースでもジゼルでもない。君は小生とこの店で暮らすことになったマリアンヌだ。小生にとって君の過去なんて取るに足りないなんてことない出来事さ。それ位に小生は君と出会えて一緒に暮らせてる今が楽しくて仕方がないんだよ。」



「(アンダーテイカーさん……)」



「だから君は素敵で美しいレディ・マリアンヌだ。それでも…受け取るのはイヤかい?」



アンダーテイカーの優しい言葉の1つ1つがマリアンヌの胸に温かく響き、涙が頬を伝った。


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