第8章 死神との生活
「お・ま・た・せ〜♪」
アンダーテイカーはマリアンヌと出かけられるのが嬉しいのか少し……いや、だいぶ浮かれているようだ。
まだ袖を通していない新しいドレスを持ってくると、マリアンヌの目の前でヒラヒラとさせ着替えるように促した。
着替えが済めば待ってましたとばかりに手を引かれ、ドレッサーに座らされる。
「せっかくの記念のお祝いだ。うんと大人っぽくしてみよう。」
櫛をヒラヒラとさせながらマリアンヌの髪を梳かすと、アンダーテイカーは器用に髪を巻きながらアップにしてみせた。
「ほ〜ら、美しいレディの完成だ〜」
最後に真紅の紅を引くと、アンダーテイカーは姿見の鏡の前まで連れて行き、全身を見せてやった。
詰め襟のワンピースは首元からデコルテ、袖までが艶やかな総レースになっていて、胸下からは黒のベルベット生地で仕立られたものだった。
詰め襟のため、髪の毛をアップにしても背中の傷跡が見えない。そんなアンダーテイカーのチョイス1つにも胸をざわつかせる様な優しさを感じて、胸がドキドキと高鳴ってしまう。
自分の両肩に手を置いてニッと笑っている姿が鏡越しに見える。
今アンダーテイカーは自分を“美しい”と言った。
勿論嬉しく無い訳がない。
だが、それは、ただの世辞なのか……
それとも本心なのか……
自身を使い古しの穢れた娼婦だと思っているマリアンヌには、とても怖くて聞けない質問だった。
「そしたら小生も準備をしてこよう〜すぐに行くからマリアンヌは店の方で待っていておくれ〜」
そう言うと、アンダーテイカーはスキップのようなリズムでマリアンヌの部屋から出ていった。
「(……………………うぅ。)」
店に無造作に置いてある空の棺桶に腰掛けてアンダーテイカーが来るのを待っているが、店の片隅に置かれた人体模型の存在が気持ち悪く、マリアンヌの背中をゾワゾワとさせた。
「(ヒ〜…アンダーテイカーさん…早く来てぇ!!)」
気味悪がりながら待つこと約15分。
中廊下に通じる扉が開かれると、マリアンヌはホッと安堵するが、現れたアンダーテイカーのまさかの姿にマリアンヌは声なき声を上げて驚愕した。