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死の舞踏

第2章 仮初


…………。駄目だ。
此れは、今考える事じゃない。
私が出来るのは、ここで息を殺して待っている事だ。

胃から迫り上がってくる自身への嫌悪感を無理やり払い、優凪は全神経を織田作の駆けて行った通路に集中させた。


……奇妙だ。奇妙な位、静かだ。私が動転している間に戦闘は終わってしまったのだろうか?

私は先程までのんびり歩いていた道を思い出す。本当に特に気にかける事無く闊歩していたから朧げだが、人影は私達以外には無かった筈だ。
だから、他の人には被害が出ていない…と思う。そしてそれは、其の儘通報する人も居ない、と云う事でもあった。

じゃあ、狙われたのは矢っ張り私……??

優凪はううん、とこめかみの辺りを両指でぐりぐりと抑えた。考える事が多くて纏まらない。頭がこんがらがりそうだ。

手近かにあった石ころを手に取って、ガリガリと地面に分かっている事を羅列した。


朝 お父さん と お母さん が 倒れてた
お昼すぎ おださくさん と 家 の 近く を 出る
中か街で 食べ歩きをする
とつぜん 打たれる
→周りに人は いない?
狙われた のは わたし?
→どうして??


…………。駄目だ。ぜんっぜんわかんない。
私は本日だけで何回ついたか分からない溜息をついた。

それでも何とか頭を回転させ、ひとつの結論を導き出す。
「両親が反社会組織の怒りを買う事をして”処分”をされた。しかし、その娘である優凪を不手際で殺し損ねてしまった。事が露見になる前に、口封じに殺さなければならないーー」

やはり、朝両親が倒れていた時にもっと状況を見ておくべきだったのだろうか。正直うすら目で無ければ見られない程の帯だたしい血の量に、思考停止したのだ。

遺体には触っていない。
一旦自宅に帰って、状況をもっとよく調べなきゃ。マフィア絡みの事件である可能性も高いし、市警にも通報するんだ。

そしてーーーーー
その後、私はどうしようか?

些細な疑問が浮かんだ。
仮に市警に保護されたとして、マフィアに協力していた医者の娘なんて存在、まず尋問を受けるのが筋のはず。

私自身は直接携わってはいなくとも、情報を知ってて黙ってた。
ーーー何かしらの処罰がある筈だ。
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