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死の舞踏

第3章 隠家


「織田作さん、この猫さんがついてきてって言ってるみたいです。ついて行きたいのですが…今動けますか?」自分で言って寒気がした。なかなかお花畑な台詞を吐いてる気がする。
「優凪…少し待ってくれ」

あ、突っ込まないんだ。
織田作は慌てて体に纏わりついた猫を1匹ずつ引き離していく。素晴らしい手際で引き離され、何故か此方に恨みがましい視線を投げてくる猫達。

優凪もその視線を躱しつつ、織田作に駆け寄り手伝う。猫に終始睨まれていたが、最後は折れて大人しく離れてくれた。

振り返ると、先程の猫はこちらを見据えながらゆらりゆらりと尻尾を揺らしていた。

「賢そうな猫さんでしょ」ふふふ、と笑いながら呟く。
「そうだな」

二人が揃ったのを確認した猫は尻尾を振るのを止め、ついてこいとチラリと優凪を見てから公園より離れた道へと入っていく。
その後ろ二メートル位を歩く。自然と織田作が右横に並んで歩いていた。

気遣ってくれてるのだろうか。無意識なのだろうか。

今まで会った大人は二択だった。
子供だからというか理由で見下しながら表向き優しい人。
もう一択は弱いものと見なして適当に攻撃的な振る舞いをする人。こんな風に子供とも思わず、かと言って大人扱いもせず
当たり前のように丁寧に扱う人はいなかった。


胸に去来したのは、安心感と今まで会った事のないタイプに戸惑う不安。

でも、私は。

(嫌いじゃない)

優凪はそう思いながら、淡々と歩を進める。

猫は幾つかの曲がり角を曲がって、やがてある道で止まった。

周囲をビルに囲まれた一角、そこにある自販機が暗がりの中でほわりと光を発している。
そしてその裏側から、縹色の毛並みを持つ美しい猫が覗いていた。
今回探していた猫だ。

「えっ」優凪は思わず声を出してしまった。
猫ってこんな所挟まるんだ…知らなかった。しかも特に助けを求める訳でもなく。

探し猫は、くあーと欠伸をした。この状況にも同ずる事なく、ドヤ顔を披露している。別に助けなんて求めてない、って顔をしてこちらをチラリと見上げた。

これは…助けて欲しい時の視線だ。
却説、如何したものか。誰か大人を呼んで来ないと。

優凪は熟考する。この自販機を一人で動かすのは無理だ。ここは私が人を呼びに行き、織田作さんに対処してもらうべきだ。
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