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死の舞踏

第3章 隠家


牛乳を啜りながら、優凪は両親の事件があくまで「他組織によるもの」で処理されている事について考えた。

両親は『ポートマフィアの報復方法で』殺されていた事を意図的に伝えていなかったからだ。

織田作さんは直感だけど、嘘をついたり欺いたりはしないタイプの人だ。もちろん上の人がそういうタイプの人かもしれないけど…
少なくともこの人は信用出来る、と思う。

じゃあ本当にポートマフィア以外の組織による犯行?
だとしても同じ屋根の下にいた私を何故殺さなかったのだろう?
しかもマフィア側に私の存在が知られていない…

空になった牛乳パックを穴が開く位見詰めた。ストローを抜き、平らに潰す。
真相はいずれ分かるはず。死ぬことに関してはーーそれからにしよう。

「それにしても」私はコンビニの袋に牛乳パックを入れ、代わりにポケットから一枚の写真を出した。

「こんなに綺麗で目立つのに、案外見つからないものなんですね」

取り出したカラー写真は依頼主から貰ったものだ。
如何にもお金持ちの愛猫といった風体の、色艶の美しい縹色の猫だった。瞳も澄んだ薄花色で、上品さに輪をかけている。
朱色の紐と鈴の首輪がアクセントになっていた。

「そうだな」織田作が考え込む素振りをした。

猫は去勢してるかしてないかで捜索範囲が変わる。そして今回の猫は去勢済みの雄猫の為、半径100メートル以内に範囲を限定して探すのが効率が良い。となるとまだ1日目だから…

考え込む織田作を横目に、優凪は再びしゃがみ双眼鏡を取り出そうとした。すると、足元にもふりとした感触が。

「……?あれ、猫さんがこっちまで来てる」
織田作さ、と呼びかけ後ろを向くと、丁度彼も大量の猫に囲まれていた。

……猫寄せの術?
そうしてる間に、優凪の足元の猫がにゃーん、と鳴いた。
手に持っている写真をじいっと見詰めている。

「これが見たいの?」
「うにゃあ」

分かったよ、と苦笑して優凪は写真を猫に見える様地面に近い所に持っていく。猫はふんふんと写真を舐め回すように見ると、突然ステステと歩いていってしまった。

(もういいのかな?)

そう思っていると、くるりと猫が振り向いた。

「うにゃ〜ん」
「ついて来い…ってこと?」

予感がした。歩き出す猫に慌てて後ろを振り向くと、織田作は未だ猫に捕まっている。
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