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死の舞踏

第3章 隠家


抑も驚かせる積りも無かったが……両親がポートマフィアの関係者だったとはいえ、彼女は一般人だ。仕方のない事だろう。
そう考えると合点がいった。

「ごめんなさい…!!織田作さんがまさかポートマフィアの方だったなんて知らなくて…!!」

そう捲したてる優凪。気にしなくていいと私は右手を上げ、彼女の謝罪を止めた。

「それに、その病院なら俺も何度も世話になっている。」

そう言うと、優凪はきょとん、とした顔で数秒間私の顔を見詰めた。そう云う問題ではないような…?とモゴモゴ呟く。

「ポートマフィアだけじゃなくて裏社会の事を悪く言うような事をしたので…織田作さんがポートマフィアに属している方なら尚更気分が悪くなったかな…と思って…。ごめんなさい」

説明しながら、彼女はやってしまったという風に赤面していた。

なんだ、そんな事か。私は寧ろ目の前の少女の機転に感心した。他人の事を直ぐに慮って、謝罪する。それも善く判っていない私のために、必死になって。

「そんな事はない」
「そう…ですか?」
「ああ。それに唯の下っ端だ」
「下っ端…?」彼女は五度程度首を傾けた。
「特に大した事はしていない」
「大した事…??」彼女の首の角度が五度から十度になった。
説明が判りづらかったようだ。

更に説明すべきだろうか。悩んだ一瞬の隙に、優凪の首の角度が元に戻った。

「今更なのですが、その仕事の時間は大丈夫なのでしょうか?」

私はつられて彼女の視線の先ーー壁掛け時計の時刻を確認した。
時刻はとうに八時を過ぎていた。私は疾っくに食事を終え、彼女もたった今食べ終わったらしく、フォークを皿の端に置いた。

もう少し話を聞いておきたかったがーーそろそろ出勤しなければ。

「済まない、出勤の時間だ」
「いえ、こちらこそ長々とすみません」

ご馳走様でした。
食べ始める時と同様にきちんと手を合わせて礼を言う彼女を見て、ふと思いついた。
彼女をひとり残すよりも、こちらの方が善いかもしれない。

「両親はポートマフィアの関係者だったな」
「?はい」
「なら、上に確認すれば何か分かるかもしれない」
「…!そうですね!」
「それと、お前も一緒に来てくれないか」
「はい!……はい?」優凪の上にクエスチョンマークが浮かんだ。
「此処に居ても、襲撃された場合に対処出来ない」
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