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死の舞踏

第3章 隠家


もし私が天候を操る異能力者であれば、外は雨が降り出し雷光が私の顔をフラッシュの如く焚いたかもしれない。それくらいの衝撃だった。

もっとも、実際の私の表情筋はぴくりとも動かなかったのだが。

「だから、昨日の朝両親が殺されていたのも、襲撃されたのも裏社会が絡んでいると思うんです」
「なるほど」

口ではそう言っているが、納得している訳では無い。之は唯の相槌の様なものだ。

両親が殺された?それも昨日?

「その両親の話、詳しく聞いてもいいか」

私は動揺を顔には出さずに続けた。長く暗殺者の仕事をしていたせいか、私の表情筋は如何も人より動かない造りになっているらしい。殺しを止めなければ、気に留める事すら無かっただろう。

「はい……。私の両親もですが、私の家系ーー橘家は、世襲的にこの総合病院の経営を担っていました。大戦の前後を中心に、裏社会の方も積極的に受け入れてたみたいです。
それが私の父の代からでした」

優凪の話に寄ると、橘家は代々医者を多く輩出してきた家系だという。町医者から大学病院、総合病院…あらゆる医療施設に出入りし権力者・有力者との結び付きが兼ねてから強かった。

「私も本来は医者になる事を目指して勉強しないといけないんですが」優凪は意図的に台詞を区切った。
「あまり向いてなくて。身体も丈夫な方でも無いし、無力でした」

力なく笑ってみせる優凪。私には想像しか出来ないが、ここまで良い家の出身なら様々な軋轢もあった事だろう。

「八年前の大戦で、私の祖父も軍医として付き添ったんです。
その際に私の両親が総合病院の代理のトップとして裏社会ーー特にポートマフィアと連携する施策を立てました。
今後の総合病院の経営を確かなものにする為でした」

ポートマフィア。

はっきり出てきた自身の勤務先に、私も覚悟して言わなければと目の前の少女の目を見据えた。

突然ガン見された優凪はと言うと、驚きながらも織田作を見返した。

「優凪。お前に言って無かった事がある。」
「……?はい」
「俺は、ポートマフィアの人間だ」
ただし、最下級構成員だが。

「……………」
「…………………」
「……優凪?」
「あっ、はい、なんでしょう!??」
どうやら驚かせ過ぎてしまったようだ。
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