第2章 仮初
目の前にいるこの人を、これ以上付き合わせて仕舞うのは苦しい。
でも、恐らく自分一人だったら今頃あの世行きだっただろう。
あの銃撃を難なく避けたこの人となら、もしかしたら。
「本当は今朝、死ぬつもりで彼処に居たんです。
……でも」
如何しても。やりたい事が出来た。
そう言い終わる前に、ぽんと頭に手がのせられた。
「……何か、事情が有るんだな」
「はい…」
「解った」
そして手が、もう一度目の前に差し出される。
あの大きくて、温かな手が。
「暫く、俺の所に来ないか」
「……!はい!ありがとうございます!!」
今度は迷わずに手を取った。
朝と変わらないその手は、優凪にとって朝よりもずっと頼もしく信じられるものに思えた。