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死の舞踏

第2章 仮初


この子、誰だろう?

呆然とした私の腕をその少女はぐいと掴み、瓦礫の下から這い出る格好になる。
突然明るくなった視界に暫し目を細め、漸く私は彼女を真正面から見据える事に成功した。

背丈は私と同じ、140センチ位だろうか。
眩い程の金色の髪は腰の辺りまであり、くるくるとウェーブしている。澄んだ蒼く大きな瞳に真っ赤な襞付きのドレスを着た、以下にも異国の可憐な美少女といった出で立ちである。

優凪を引き続きじーっと凝視する美少女。
なんだか佳く分からない儘、応戦する優凪。

すると満足したのか、彼女はニコッと笑った。
「貴方がオニね!」
「……えっ?何の?」思わず聞き返す。
「何って、鬼ごっこに決まってるでしょ?私逃げるから、ちゃんと捕まえてよね!!」

そう云って脱兎の如く逃げ去る謎の美少女。
……なんだったのだろうか。

「……優凪、無事か?」
「あっ、織田作さん……!」

待ち構えていた人物の登場に、優凪は織田作の胸目掛けて飛び込む。…ハズが、単純に身長の関係で腰に頭をぶつけただけだった。

「痛たた…」
すると織田作がすっと目の前に屈んだ。
何かと思えば、頭をゆっくりと撫でられる。力を入れすぎて壊さないように、それでいて優しく。そんな気遣いが手からじんわり伝わってくるようだ。

「ありがとうございます。私は平気です」
「……そうか」
少し、ほんの少しではあるが。
微かに笑ってくれた気がする。それが嬉しくて、また笑い返した。

「その手はどうしたんだ」
「?」

ふと手を見れば、真冬でも無いのに酷く赤くかじかんでいた。
嗚呼、何時もの事なんです、と返す。
本当の事だった。ひどく緊張したり興奮すると、身体から熱が奪われたかのようにヒンヤリ冷たくなっている…なんて事がよくあった。それで家のお手伝いさんにも驚かれたっけ。
アハハ、と苦笑いして手を摩った。

そうか、と短く返す織田作。
「織田作さんこそ、先刻の……怪我は無いですか?」
銃撃戦、という程の音はなかったので、変な聞き方になってしまう。
「ああ」
「良かったです」
再び、破顔する。

「あの、織田作さん…私、本来なら交番に行った方がいいと思うんです。でもその…どうか、話を聞いていただけませんか。
先程銃で撃たれた事とかも含めて、お話させてください」

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