第30章 〜緋色の欠陥、晒される過ち〜
少し視野を広げて考えてみればそう、謎の究明と組織への復讐心にその目が眩んでいたが、それよりも大事なことがあったじゃないか
コナンは彼が工藤新一だった頃から、事件や謎を推理することばかりに夢中になっていた。亡くなった者を悼むよりもトリックを、加害者の思想に寄り添うよりも名声を、犯行動機を知りたかっただけだ。加害者にそれを暴いて突き付けるのが酷く快感だった。それが江戸川コナンになって、追い詰めた犯人が目の前で亡くなっていくのを見てしまい、故意でなくても悪であると思い知った
そこから自分なりに上手く立ち回ったつもりだが、結局根本的な部分は変わっていない。いくら大人顔負けの頭脳があったところで、誰かの感情や死する意味を理解せず、他人への信頼や責任も足りず自分本位に動いていては大問題だ。ましてや命を失くした事件で好奇心を満たすなど、仲間を救う為とは言っても他者の存在を抹消するなど、我が事ながら恐ろしい思考だった
赤井秀一も自分が組織に抱える執念、子供を立てて任務に加担させた事が狡猾で恐ろしかった。仲間も自分の組織に対し、個人的な恨みを持っている人間が多い、目的の為ならどんな罪でもこの手を染める、母国の信頼や一般人の安全よりも利益と復讐を優先させた。どんな違法捜査も司法取引で許される、そんな巫山戯た気持ちを持っていた。そうじゃ無いだろう、自分達FBIは法律と一般人を犯罪から守って行くのが使命だ。秩序を取り締まる組織が、大義名分で胡座をかいて罪を無かったことにするなど愚かでしかない……
罪は罪でしかないのだ。正義の為の汚濁も、私情優先の捜査も、礼儀を欠いた行動も、それらは職務違反とされている。結果が良ければそれでいいのか、自分が満足すれば解決なのか。……答えは否だ
「……我々は行動を誤った。簡単に赦される業ではない。全ての違法行為、死亡の偽装を打ち明けたところで過去の咎は消えず、俺達の今後に大きく響き続ける。日本側から組織の捜査を外されたとて仕方がない、それだけの事態をFBIが起こしたんだ」
「……っ!!それでも、例えそうだとしても、」
「ああ」
膝で拳をきつく握りしめて俯くコナンの頭を優しく撫で、沖矢の変装をしたたままである赤井は自分の古巣の仲間へ連絡を入れた。もうこれ以上の過ちを犯さぬ為に、何より組織壊滅の悲願を達成する為にーーー
