第30章 〜緋色の欠陥、晒される過ち〜
今まで黙って二人の話を聞いていた沖矢が顔を顰めながら問えば、コナンが愕然とした表情で彼の名前を呼んで咎めた。しかし止めるにはもう遅い、安易に言うべき事ではなかった
「……は?完璧って何処が?誰かの遺体を使わなければならなかった、寧ろそこまで追い詰められたの間違いだろ」
「!!」
「その人間の人生、命、肉体、それらは其奴だけしか持てない歴史の名残なんだ。真っ当だろうと罪人だろうと、死ねばただの亡者だ。命の価値なんて数値化出来ない、そういう意味で価値がない貴重なものなんだ。誰かと代えれるものではないし、その人間の代わりはいない。どんな理由があっても消耗品のように犠牲にするべきじゃなかった……。命も遺体も、都合よく扱う便利な道具じゃないんだ」
いっそ軽蔑の眼差しを沖矢に向けてそう言い放った清光。かつて麻衣という地雷を踏んだ時より冷徹な威圧感と殺気を纏い、倫理観を訴える言葉の重みが沖矢とコナンに衝撃を与えた
「別に遺体を用意しなくても、車を完全に破壊させれば偽装はできる。証拠の不十分さはそこまで考えられる協力者の頭脳なら対応出来そうじゃない?国に筋を通して仲間を頼れば良かったんだ」
「そ、それは……」
何かを言いかけて口をつぐんだコナンと、再び沈黙しきった沖矢は両者は 共に顔色が悪い。なんて悍ましい計画を起こしてしまったんだろう。揃って次第に真っ青になって俯いているのをチラリと見やった清光だったが、無愛想な態度は崩さずに尚も言葉を言い含めた。今度は呆れの中に優しさを滲ませてーーー
「……まぁでも、偽装する他がなかった事実は情状酌量の余地があると思うよ」
「……え?」
「きちんと其奴らが誠意を持って話し、日本に謝罪と捜査情報を入れさえすれば、母国の信頼は辛うじて保てる。過去の後悔はいつでも出来るし、大切なのは現在と未来の最善だ。そうでしょ安室さん?」
「どうでしょうね……。警察機関は部署によって違法捜査も行います。それで無かったことにされるかもと疑いますよ」
「さすがに認識してるでしょ。違法捜査は許可を得たって、犯罪である事に変わりはない。罪が法の罰で赦される機会もない。秘密を墓場に持っていくだけだ、自分達が己を戒めるしか無いんだ。つーか、国際的な規定は当然の礼儀、許容の範囲外だろうしね……」
