第30章 〜緋色の欠陥、晒される過ち〜
しかしそれもフェイクだったと思われる。撃たれた男はいつも黒いニット帽をかぶっており、その近所にはMI6も顔負けの発明品を作っている博士が住んでいる。その人物に頼めば、空砲に合わせて血糊が噴き出す仕掛けを作れるだろう
ならばグルの女に頭へ空砲を撃てと頼んだのか?否、頭を撃てと命じたのは監視役の男だった。しかもこの計画を企てたのは別の人物、撃たれた男は「まさかここまでとはな……」という言葉を残していた
一見自分の不運を嘆く言葉に聞こえるが、「読んでいたとはな」と付け加えると意味が大きく変化するーーー
「ちょっと待って。最早ツッコミしかないけど、そんなの一般の犯罪者達ができる事か?」
「ええ、普通の犯罪者だったらまずしません。実は偽装した男とグルだった女は、とある外国の警察で働き、日本に申請もなく黙って捜査してるんです」
「はぁああ?!何それ、日本と決別したいってわけ?!」
「け、決別……?一体どうして?同じ警察が捜査してるだけなんだよ?!」
真顔で疑問を出して話を遮る清光に対し、安室が口にした答えに彼は大きく声を荒げた。その言い分があまりに不本意だったコナンも、あまりの激情ぶりに戸惑いながらも口を挟み、清光からの冷ややかな視線と知らない事実を突きつけられる
「お前は知らないんだろうけど、国際規模の捜査ってのは申請が絶対必要だ。そもそも国によって法律が違うだろ、国境を跨げばその地はその国の法律で守られている。申請を出すのはその地で自分の国の捜査を認めてもらう為、正当な許可証なんだよ」
「えっ……」
「つまり申請が無ければ、それは母国の信頼と一般市民の安全、自分達の存在意義と秩序を無視したも同然なんだよ」
コナンはそんな考えるまでも無い単純な答え、当然の事に今更ながら絶句してしまった
「しかもこの計画、協力していたのは一般人で仲間は何もご存知なかった設定です。秘密を完全にするために、ね」
「いやいや!それこそきちんと日本に筋を通して情報を共有しなよ!仲間と話し合って永続的な緘口令を敷けば、詮索する人間に黙秘を貫ける。それで怪しまれたとしても何だ、全員の供述が合えば探りようが無い。何なら頭を撃たれた偽装だけでも十分だった」
「……ですが沖田さん、彼らの作戦は遺体を使ったからこそ完璧だったのでは?」
「す、昴さん?!」
