第30章 〜緋色の欠陥、晒される過ち〜
「ブラックコーヒーをお願いします。実は今日、コナンくんと一緒に幽霊が出ると噂のお化け屋敷に行ったんですよ」
「ぼ、僕はオレンジジュースで」
そうして早速オーダーを頼む流れで話し続ける沖矢を、まずは大きいグラスにジュースを注ぎ始めた安室が「へぇー、そうなんですか」とにこやかに対応する
「ですが、あそこは最近閉まりましたよね?」
「ええ、突然営業中止になったそうで……。僕としてはせっかく幽霊と接触できる機会で興味深かったんですがね。沖田さんも本職として興味があったのでは?」
「残念だけどそういう欲は無いよ。つーか、そんな幽霊の話に熱くなる必要ないでしょ。暇なの?」
「別に暇というわけではないんですが……」
「それより社会の常識を勉強したり、法律調べる方が遥かに将来自分の為になると思うけど?」
「そりゃあ、まぁ、そうだろうけどさ……」
肩をすくめて残念がった沖矢が意見を求めるのだが、心底しょうもなさそうな清光が最もな言葉を述べた。あくまでコナン達の死活問題なんて、彼にとっては瑣末事でしないのかもしれない。それはそうだ、本職なのだし麻衣がいないとコナン達にも無関心な節がある
こんなに自分達は頭がいっぱいなのに。そう思っては密かに恨めしさを感じていると、オレンジジュースをコナンの前に置いた安室が真剣な表情になって話を切り出した
「……でしたら沖田さん。僕が考えたとある事件と推理があるので、ぜひとも色々感想をお願いしたいんです」
「感想ねぇ……そんなの探偵同士でやればいいじゃん」
「そう言わずにお願いします。沖矢さんとは一度話した事なんですがね、ミステリー好きだと『満足されるだけ』なもので……。話は所謂、死体すり替えトリックなんですよ」
「は?」
「「……っ」」
死体すり替えトリック、そう聞いた途端に清光の纏う空気が凍えて発した声も一段と低くかった。そんな瞬間的な重圧にコナンと沖矢は息を呑み、これから安室が語るであろうその内容が分かってしまっても止めに入らなかった。本能が逃げるのを拒絶しているのだ、地獄がそこにあるような怒気を孕んだ清光に震えが止まらない
「それさぁ、創作だとて質(たち)が悪いと思うんだけど?」
「ええ、ですから聞いてほしいんです。実際起こったかもしれない話、未解決の時事件として」
