第25章 〜毛利蘭の苦悩〜
そして幼馴染の工藤新一についても、学校の休み過ぎで授業に追いつけないまま留年しないか。事件の捜査を大人に託し、学生としてきちんと勉強に集中しながら進路に向けて取り組んでほしい。勿論探偵になる夢を早く叶えてほしいと願うも、まずは自分や園子を始め身近な人と疎遠になってまで事件に深入りするのは頂けないと思っていた。彼は推理に没頭しすぎて、身の危険よりも謎を解いた快感を求めている。探究心が強くてデリカシーの無い時もあり、事象を解明出来ても感情に疎い事がある。更に世間は新一が死亡したと思っているようで、時々連絡を取っても本人は事件で忙しい様子。なのでもはや腹が立つのを越して、新一が好きな自分も彼自身にも呆れてしまっていた
そんなわけで蘭は、周囲に及ばぬ頭脳と未だに決心が鈍って家族や幼馴染を変えられない己に劣等感を持っている。武器を持って錯乱しては暴れる犯人を、数いた凶悪犯を蹴りと拳で昏倒させる力があっても未熟なのだと。寧ろ事件を未然に防ぎ、他者の過ちや悪人を懲らしめようと奮起しては自分がトラブルを招きかけた事もある。かつて世良には痴漢と誤解してバス内で攻防を仕掛け、今は幼馴染の家で居候している沖矢昴を空き巣と思い込んで確認も取らずに蹴りを入れた事もあった。挙句、母親がプライベートで知人の男に会っているの見、浮気と勘違いして怪我をさせかける事案も数ある。全て相手が優しい人達だった為に笑って許されてきたが、何度も同じ過ちを衝動的に起こしてしまう
ならば誠の自分と強さとは何だ、誰かに寄り添い頼られるようになるにはどうしたら良いのだ。無くならない犯罪と悪意、被害者の無念と加害者の後悔と嘆き、遺族の悲しむ姿、大事な誰かを自分から引き裂く事件への密かな苛立ち。そんな感情に翻弄される自分に蘭は嫌悪している
涙ながらにそう告白していく蘭に、園子は「こらしめちゃおうって言ってる自分も非がある。蘭のせいだけじゃないわ」と親友の肩を抱きしめていた。二人の友人を見ている世良も、「誤解した事自体は無理もないし、結果無事だったからボクも他の人も許してくれたんじゃないか?」と蘭に声をかけていく。しかし蘭は立ち直れないほど参っているようで、困った園子と世良が麻衣へと目を向けた。麻衣は彼女達にしっかりと頷き、自分の全てを責め続けていく蘭に優しい言葉と気づきを与えていく
