第25章 〜毛利蘭の苦悩〜
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後日、毛利蘭は自身の家庭事情を知っている同級生の二人、世良真澄と鈴木園子を誘ってポアロを訪れた。小五郎が探偵の依頼で一日仕事に外出していき、そんな小五郎に同行出来ずに用事のなかったコナンは園子達と遊ぶ蘭が面倒を見る事になった。しかし蘭が園子や世良に会いに行くのにコナンがいるのは少し気まずく、かつて自分も幼馴染とお世話になった阿笠博士に連絡を入れて預かって貰えるように手配した
すると目敏く察しの良いコナンは蘭に「何かあったの?」と尋ねてきたが、「何でもない」と笑って釈然としない顔をするコナンを阿笠の自宅に連れて託している。その為、コナンは蘭の強引さから何か自分が知ると面倒な事情があると勘繰るのだが、判断材料がないので全く検討もつかない。けれど、気がかりすぎるコナンはこの日のポアロに出勤するであろう安室に、蘭の様子が変でそれとなく探って欲しい旨を連絡した
それを全く知る由もない蘭は、世良と園子とポアロで合流すると安室にテーブル席を勧められ、モーニングセットを一緒に注文する。暫くメニューが届くまでの間は園子や世良と軽く世間話をしていたが、安室がモーニングの食事とドリンク三人分を運びに行ってみると違和感に気づいた。いつもは明るく元気な蘭がぎこちない笑顔で取り繕い、後の二人もそんな蘭に戸惑っているのか園子が無理矢理明るく振る舞ってみたり、世良が踏み込むべき迷った顔で蘭を見ていてほの暗い空気になっていた
「お待たせしました、モーニングセット三人分です!」
「あ、来た来た!ありがとう安室さん!」
「いえいえ。しかし皆さん、何だかいつもの元気が無いようですね?ぜひとも甘い物を食べて心を休めてください」
女性客にうける営業スマイルを浮かべ、女子高生三人の前に食事とドリンクを素早く並べていく。そして店員として贔屓の客を心配している程度に、(実際深く問い詰める気などないが)あまり傷心を刺激しない言い方で探りを入れてみた。すると依然落ち込んでいる蘭本人を心配しつつ、向かいで正面に座った園子が声を顰めて安室に少しだけ打ち明けた
「実は蘭、この頃家族やガキンチョに色んな不満溜め込んじゃってるみたいなのよ」
「え?」
「ボクと園子くんがこうして集まってね、蘭くんの本音の愚痴を聞いてるんだけど相当キテるみたいだ……」
