第20章 会計委員会
「失礼します。」
ゆうきがガラッと戸を開けると、もう全員揃っており、作業に取り掛かっていた。
「ごめんなさい、遅くなっちゃった。…っていうか、皆制服なんだね。」
ゆうきは浴衣姿で来てしまい、場違いに感じた。
潮「構わない。合間に鍛錬をすることがあるから、制服を着ているだけだ。」
「あぁ、例の…。」
潮「ではゆうきさん。先ほど団蔵と左吉がつけた帳簿のチェックをしてくれ。」
「はい!」
会計委員会の夜の活動が始まった。ゆうきは先ほど教えてもらった算盤と、持ち前の事務処理能力を活かして確認作業を行う。
「あ、左吉君ここ違ってるよ。」
左「すみません!」
「団蔵君、これ…何て書いてあるの?」
団「ええと、これは………読めません!」
「もう〜〜」
潮(彼女がいると普段殺伐としている委員会活動の雰囲気が柔らかくなるな。それなのに皆、自ずと仕事に対して前向きになっている…。一名集中できてないようだが。)
三木ヱ門は、一年生とゆうきのやり取りを、口を開けたままぼうっと眺めている後輩に声をかけた。
田「左門、手が止まってるぞ。」
神「はっ!!別にゆうきさんのチェックが羨ましいなんて思ってませんからね…!」
潮「何だ左門、チェックして欲しいのか。それなら俺が見てやろう。」
神「あ、あぁ。はい、ありがとうございます。」
お礼を言った左門は、口を開けたまま明らかに嫌そうな顔をしていた。
左「神崎先輩、顔に出てますよ。」
「「「ぷっ…あはははは!!」」」
左吉の冷静なツッコミに笑いが起こった。
潮「ったく…。ゆうきさんに見て欲しいなら、早く今やってる帳簿を終わらせるこったな。」
文次郎は居心地悪そうに頭を掻いた。
潮(こんな和やかな委員会、いつぶりだろうな…)
しばらく仕事を進めていると、団蔵が口を開く。
団「潮江先輩、お腹が空きました〜」
潮「そうか、握り飯でも作ってくるか。」
席を立とうとした文次郎をゆうきが制した。
「おにぎりなら私が作ってくるよ!」
潮「あぁ、いや…いい。」
文次郎に一度断られてもゆうきはへこたれなかった。