第25章 キス…した、い。
「え、今なんて」
「だから、俺にキスしたら貸してやる」
まるでその顔は悪餓鬼のようだった。
「………」
そんなの絶対無理に決まってるじゃん!
「そろそろ…俺に触ってもらいたいだろう?」
「っ!」
全くもって意地悪で悪質で確信犯だ。
この悪魔め。
「そんな事…ない」
「嘘つくなよ」
「……」
もう全部見透かされているんだろう。
ああ駄目だ、私の負けだ。
「………キス…した、い」
消え入りそうな声。
ローは至極満足そうに笑った。
「良く言えたな」
ローの手が伸びてきて、捕まえられる。
腰と後頭部に手を回され身動きを奪われた私は躊躇いなく侵入してくるその舌を大人しく受け入れるしかない。
恥じらいから僅かに抵抗を見せるがアルコールの入った体では思うようにいかず、寧ろローのキスにその作用もあって頭はもう、とろけそうだった。
「ふぁ…ろぉ…ぅん、ふ…」
だらしなく唾が口元から零れていくのが分かる。
ローはそれさえ器用に舐めとって、私の口内を思う存分に貪り続ける。
息継ぎさえ許さない絶え間ないその行為に苦しくなって、ローの胸をどんどんと押して限界を訴えるも、僅かに唇が離れるのを許してくれるだけでまともに息が吸えない。
「ふぅ…んっ、ふ、ろ、ろぉ…っ」
目は虚ろで何も考えられない。
ローが支えてくれていなければ今にも倒れてしまいそうだった。
「やけに大人しいな」
やっと解放され肩で大きく息をする。
目には苦しさからうっすら涙が浮かんでいた。
「お前…煽ってんのか」
「えっ…?」
気付けば背中に当たる柔らかいスプリングの感触。
目の前には熱を帯びて潤んだローの瞳。
私は押し倒されていた。