第4章 揺れる心
「日本、湿度やべーな。家でよきゃシャワー貸す」
「わり。借りるわ。やっぱこっちに実家があるってのはいいよな」
午後になって気温も上がってきてさすがに暑すぎたのと、できるだけ人の少ねぇコートに来たけど、時間とともにギャラリーが集まってきちまって、これ以上続けてたら居場所が拡散されたりして騒ぎになりそうで切り上げた。
黄瀬が居たら多分もっと騒がれてた。
黄瀬がバスケ好きで本人もプレイヤーだったってことは日本中で知られてる。
スポーツ番組でBリーグの選手を圧倒的に負かしたせいで、収録長引いてマネージャーにめちゃくちゃ怒られたって笑ってたけど、あいつのバスケセンスならそれは簡単に想像がつく。
「バスケになるとついマジになっちゃうんスよ」って笑ってたあいつは、今日はドラマの収録らしい。
集まって見てた人達に、撮った写真を居場所が分かるようにアップするのは控えてくれって頼み込んで、サインと写真を頼まれるだけ対応した。
「おい、青峰!お前こっちもやれよ!」
「あ?今俺はちびっ子対応中なんだよ。俺はチビ優先」
抱っこして欲しいと頼まれたのか5歳くれぇの子供を抱っこして写真に応じる青峰は、向こうにいるよりかなり雰囲気が柔らかい。
一通り対応を終えて車に乗ると、既にバスケを切り上げてから1時間以上経ってた。
「おじゃまします」
「あらー!火神君!!いらっしゃい!」
明るい青峰の母さんが出迎えてくれて、シャワーを借りると飲み物を用意してくれた。
「大輝はいつも火神君の事ライバル視してるの」
そう言われて嫌な気はしない。
俺にとってもこいつは一番のライバルであり目標。
「うるせーな。ライバル視なんてしてねーよ。俺のが全然上手い」
こいつ…
否定されてムカつきはしねぇけど、せめてライバルとは思われてぇ。
「んなことより、寿司食いてぇ。行こーぜ」
「なんだ急に。まぁいいけど」
「黒須は?勝手に食ってったらなんか言われねぇ?」
青峰ってこんなこと気にする奴じゃねぇ気がすんだけど…
みさきに会いてぇってことか?
青峰の提案で一緒に飯を食うことになって、マンションの駐車場に着くと、すぐに車が入ってきて、車を停めるとちょこちょこ走ってこっちに来るみさきが見えた
やっぱ可愛いな…
色気はねぇけど