第7章 近づく距離
何だよ……
そういう意味なら最初からそう言えよ
マジで勘弁しろ
見慣れてるとか触るとか言われたら誰だって勘違いするだろ?
心臓に悪すぎだ
けど、勘違いでマジでよかった
黒須は俺と火神がなんかあったのかって心配してたけど、心配するとこがおかしい。
ここまで聞きゃ普通なら自分の事好きなのかとか思ってもおかしくねぇのに、結局黒須は全く気付かねぇどころか「そんな事より…」とか言って話題を変えられた
何が“そんなこと”なんだよ
俺にとっては一番重要で、この数日間どんだけヤキモキしたと思ってんだ。
マジで鈍感すぎる。
黄瀬が言ってた黒須は鋭いっての絶対ぇ嘘。
ガセネタ掴ませやがってあの金髪
これが鋭いなら世界中鋭い奴だらけだ
まぁいいわ…
取り敢えず黒須は火神を男として見てねぇし、さっそく失恋って流れにはならなかったのはマジでよかった
俺の勝手な思い込みも解決したところで、マイアミでのトラブルの内容を聞き出すと外出しねぇのに賛成だ。
それにしてもあの火神を怒らせるなんて相当なバカ女だな
基本あいつは怒らねぇ。
ネロにもすげー優しいしファンサービスだって断ってんのなんて見たことねぇ。
火神が黒須を大事にしてんのなんて見てりゃ誰にだってわかるっつーのに、排除しようとするなんて作戦ミスだろ。
まぁ黒須のスケジュールは漏れねぇだろうけど、こっちのでかい企業はどこにどんなコネがあるか分かんねぇから用心しなきゃいけねぇのには変りねぇな。
取り敢えず一人にしとくのも心配だし俺も一緒にいてぇし…
「こっちの部屋来るか?」
「うーん…」
すんなりはいかねぇって分かってたけど、そういったっきり黒須が黙りこくって困ったような顔をしたり考えるような顔をしたりして、俺が呼んでも気づきもしねぇで考え込んでた。
警戒されてんのは分かってる。
けどここであっさり引く訳にはいかねぇ。
このシーズンオフを逃して時間が開いちまったら、黒須と接点が切れるような気がした。
少しでいい
少しでも黒須との関係を確かなものに変えときたかった。
緑間の結婚式で居合わせた火神の幼馴染っていう第三者を挟んだ関係じゃなく、俺と黒須っていう直接の関係を少しでも作りたかった。
誰かを介さなくても繋がれる関係になっておきてぇ