
第14章 Happy Birthday!!

7/3
今日は朝から落ち着かない。何故かって?そりゃもちろん、今日が彼女にとっての大切な一日だからだ。
彼女というのは、僕の元モデル仲間で今でもすごく仲良しな小佐野瑠衣のことだ。今日は瑠衣がこの世界に誕生した日。祝ってあげたくて仕方がない。
3週間前から誕生日プレゼントを悩み続け、悩みに悩んで出した答えが手作りのお菓子。瑠衣は僕のお菓子を本当に美味しそうに食べてくれる。桐絵もそうだけど、見てるこっちまで幸せになる。
そんな顔が見たいという自己満な理由と、単純に喜んでくれたら嬉しいなという期待がこもっている。
(学校では両手一杯にプレゼント持ってたから、本部で渡そうと思ってたんだけど...)
チラリと廊下の角からとあるスペースを覗き込む。
視界の先には諏訪隊のメンバー。今日も和気藹々と楽しそうに話している。いつもなら普通に交ざりに行くところだが、今日は少し躊躇ってしまう。
普通に行けばいいじゃないかと思うだろう。しかし、隊の絆というものは時に強固で、割り込む隙を与えてくれない時がある。今が正にその時なのである。
(今日はこのまま、諏訪隊で食事に行ってお開きかな...)
「ケーキ、どうしようかな...」
手元の紙袋を目線まで持ち上げ、ボソッと独り言を零す。
「捨てちゃうの?」
その独り言が独り言になりきれず、聞きなれた可愛らしい声の返事が聞こえた。
パッと声の方を向くと、先程まで談笑していた瑠衣がいた。
「る、瑠衣...」
「それ、アタシ宛のケーキなんでしょ?捨てちゃうの?」
「え」
思いがけない言葉に、思わず固まってしまう。何でバレているんだろう。
「ケーキじゃないの?今日の明希、朝からずっと甘い匂いしてたからケーキだと思ってたんだけど」
「...瑠衣の言う通りだよ。これは瑠衣の為に僕が作ったケーキ。もっと早く渡したかったんだけど、ずっと周りがわちゃわちゃしてて落ち着いて渡せなかったから、タイミング逃しちゃって...」
瑠衣はそうだったんだと、あっさり納得してくれた。
これ以上瑠衣を待たせる訳にはいかないと、顔を上げて祝いの言葉を伝えた。
「誕生日おめでとう、瑠衣。これからも、僕と友達でいてね」
「やっと言ってくれた〜。もちろん、そのつもりだよ。大好きな明希とこれからも友達でいるって誓うよ。ありがとね、明希」
「どういたしまして!」
