
第13章 ストーカーにあったら
迅視点
こんな未来に行き着くはずじゃなかった。この未来は本当に僅かな可能性でしかなくて、予知の1割にも満たない程度だった。
大して気にする程じゃないと思い込んでいた。何でこんな未来になったんだろう。
銃声の後、鍵の掛けられた部屋をぶち破って中へ入った。瞬間、俺は目の前の惨状に目を疑った。
無機質な床に広がる赤い池。それは紛れも無い血液で、その出処は明希だった。池の面積は今も尚広がりつつあり、痛みに耐える苦痛の声もだんだんと大きくなる。
「...!」
明希が再び撃たれる未来が見えた。今度は間違いなく明希を狙っているのだ。咄嗟に拳銃へ向け、スコーピオンを投げて使えなくする。それと同時に、風間隊の2人が犯人を気絶させ、拘束した。
「姉さん!姉さん!!」
「は...る...?」
明希の弱々しい声が聞こえ、咄嗟に駆け寄る。遠目で見たより出血量が多く、今も尚絶え間無く流れている。
これ以上の出血は命に関わると判断した俺は、明希のタイツの患部から下を破いて止血を施す。それだけでは頼りないため、京介が持っていたタオルを使って更に上からキツく縛る。
「いっ...!」
「我慢して。こうしないと死んじゃうから」
俺の大切な人達は、いつも俺だけ残して消えていく。
母さんも最上さんも明希も。もうそんなのは懲り懲りだった。目の前に居るのに助けられなかったあの時とはもう違う。俺は大切な人を助ける為の術を持ってるから。
止血を終え、体温が下がらないように上着を着せて温めていると、眠っていたはずの犯人が目を覚ました。
「凄い生命力だね、センセ。ゴキブリ以上じゃない?」
「何故お前がここにいる!?...何故明希を抱き締めている!?」
明希を取り戻そうと、血相を変えて飛びかかる。しかし、それは風間隊の2人によって阻止された。
「何言ってんの?センセ。明希はアンタのじゃない。『俺の』だよ」
「お前の...?何故だ?明希とお前に何の接点もないだろう!あるのは精々ボーダー隊員という僅かなものだろう!?」
「生憎、俺たちはそれだけじゃないんだよ。俺と明希は幼馴染なんだ。生まれた時からずっとね」
幼馴染?馬鹿な事をと嘲る犯人。証拠が無いだろうと、煽ってくる。
これから記憶を消されるやつに見せる証拠なんて、ハナから持ち合わせていない。
それに、アイツの反論なんて何の意味も持たないのだ。
