
第13章 ストーカーにあったら

明希視点
怖い。その感情で僕の心はいっぱいだった。痛む足を1歩踏み出すごとにその感情は大きくなり、僕の喉から頭までを黒一色に変えていく。
「そう、そうだよ。早くおいで!そしたらやっと!本当の意味で君は僕のモノになる!」
「藤咲...!テメェ、あの人の事大切なんじゃねぇのかよ!」
確かに、悠一の事は大切だし大好きだよ。でも、今はカゲさんの命の方が大事。
だんだん呼吸が苦しくなる。まとわりつく様な気持ち悪さで、体が重く感じる。
「そんな奴の言うことなんて聞かなくていいさ!君は僕だけを見て僕だけを愛し続ければいいんだからね!」
「俺の事はいいっつってんだろ!他の奴らが護ろうとしてくれてたのに、そっち行ったらアイツらの頑張りが意味ねぇだろ!」
皆には本当に感謝してる。勿論カゲさんにも。でも、今はこれしか最善策思いつかないの。
先生との距離があと2mを切った時、上の階から足音が聞こえた。思わず足が止まる。
「明希、どうしたんだい?もしかして、彼の言葉に傾きそうになった?それはいけないな。やっぱり今殺してしまおう」
「ダメ!ちゃんと先生の所まで行くから!撃たないで!」
再び懇願すれば、今度は先程とは違う答えが返ってきた。
「...どうして彼を護ろうとするんだい?彼は君にとって怖い存在だろう?目付きが悪くて口も態度悪い。オマケに頭も悪いときた。そんな彼の何処に護ろうと思える要素があるんだい?」
そんなもの1つしかないし、人を護るのに立派な理由なんてなかった。
「カゲさんは確かに目付きも口も態度も頭も悪いけど、凄く優しい人だよ!ちょっと人と関わるのが苦手なだけで、話したらいい人だし、面白いし、後輩思いのいい先輩だよ!先生にはわからなくてもいい!僕はそんなカゲさんだから、護りたいって思うの!だから、撃たないで!...撃つなら僕を撃ってよ」
「明希を撃つ?そんな事僕がする訳ないだろう?それに、君にここまで言わせる彼にはやっぱり死んでもらう。彼だけじゃない。今からこの部屋に来るであろう上のガキ共も皆殺しだ。コレは君のためなんだよ?理解してくれるね?」
「やだ...嫌だ!皆を殺さないで!」
先生は僕の声など聞こえていないかのように、静かに拳銃を構えてカゲさんに向ける。
「まずは1人目」
発砲の寸前、弾の機動の途中へと割り込んだ刹那、太ももに鈍くも鋭い痛みが走った。
