第13章 ストーカーにあったら
埃っぽい廃墟の中で、意識が戻る。目を開けるとカゲさんが不安そうな顔で僕を見ていた。
「おい、大丈夫か?」
「...大丈夫です」
「そうか。なら他の奴らの安否確認すんぞ。幸いな事にスマホは取られてねぇみたいだ。ここがどこかは後な」
普段の言動からは考えられない落ち着きを見せられ、若干困惑するが非常時だと思い直し17歳グループLINEを開く。すると、数名転んだ怪我はあるものの、みんな無事だった。
「僕とカゲさんも一応無事だよ」とメッセージを入れると、「よかった」「カゲやるぅ!」等安心したような明るい返事が届いた。蓮琉にもLINEを入れると16歳組もみんな無事だと帰って来て安心した。
「...その様子だとお前らのとこは大丈夫そうだな」
「はい。蓮琉達もみんな無事です。カゲさんの方はどうですか?」
「...これ見ろ」
カゲさんのスマホを見るとピースしながら変顔をした当真さんと、真顔の村上先輩が写っていた。
顔の温度差に思わず吹き出してしまったのは仕方ない。
「アホだろコイツら」
「大丈夫そうでwww何よりですwww」
少し笑った後、この後どうしようかと話し合う。ここは警戒区域とは言え、街に近い場所だ。無闇に出て見つかっても面倒臭い。かと言って他と合流出来ないのは少しキツい。
考え合っていると、カゲさんが何かに反応した。その何かは犯人の嫌は気配だった。
「藤咲、逃げるぞ」
「でも、犯人はこの建物に居るんですよ?出会い頭に襲われるかもしれません!」
「んな事言ってる場合かよ。この部屋の鍵が空いてるのはチェック済みだ。出るなら今しかない」
カゲさんに横抱きにされて移動する。空いていた地下への扉のようなものに体を滑り込ませて隠れる。
「おい、犯人がこっち来てんぞ。何か発信機でも着いてんのかよ」
「...心当たりがあります」
犯人が触っている僕の私物で、常に持っているもの...それは鍵しかなかった。
カバンの横ポケットから鍵を取り出す。小さなクマのぬいぐるみが着いた鍵を見たカゲさんは、ぬいぐるみにおかしな縫い目があるのに気付いて糸を解く。出て来たのは小型の発信機らしきものだった。
「これだな。ったく、変な奴に目ぇつけられやがって...」
「すみません...」
盛大に溜息を吐かれ呆れられた。
...好きでストーカーされてるわけじゃないもん。
