第13章 ストーカーにあったら
明希視点
蓮琉と並んで歩く帰り道。
今日の仕事の事とか、初めての授業の事とか他愛もない話をしていた。
暫く話したあと会話が途切れた。そして再び感じ始めた気配に少し怯えながら、蓮琉の制服の袖を引く。
「姉さん?大丈夫か?」
「...ごめん、ちょっと気分が悪くなっちゃって...」
自然な流れで顔を近づけ、おでこをくっつけて熱を測る。
「熱は...無いな。辛いならおぶるが」
「流石にそれは...蓮琉の負担が大きいよ」
「今の俺は、もうあの頃の小さな俺とは違うんだ。背も姉さんより高くなったし、何より、力は俺の方がある。姉さんを背負うぐらい屁でもない」
数年会っていないだけで、こんなにも男らしく堂々と逞しくなるものなんだと、弟の成長に感動してしまう。自然と体が蓮琉へと凭れかかる。
「...じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「家に着くまで寝ててくれ。少しは楽になるだろう」
「ん...」
服越しに伝わる温もりと蓮琉の匂いに包まれて、僕の意識はゆっくり薄れていった。
次に目が覚めたのは自室のベッドの中だった。日は既に越えており、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。
(そう言えば、約束のクッキー作れなかったな)
下からトントントンと規則的な音がするため、蓮琉がご飯を作ってくれているのがわかる。
体を起こしリビングへ行くと、ご飯の良い匂いが鼻とお腹を刺激する。
「蓮琉おはよう」
「おはよう姉さん。具合はどうだ?」
「お陰様でだいぶ楽になったよ」
「それはよかった。朝食までもう少し時間がかかるから、先に着替えてきたらどうだ?」
「うん。そうするよ」
制服のまま寝たせいで、制服に若干のシワがついてしまった。軽くシャワーを浴びた後、制服にアイロンを当ててなんとかシワを伸ばし、再び袖を通した。
犯人視点
何だあの男...俺の明希にあんなにベタベタ触りやがって。明希が優しいから断れないのを逆手にとっておんぶまでして...。
俺と明希の未来を邪魔するやつは絶対に許さない。
明希も俺というものがありながら、他の男に気を許すなんてな。いや、アレは男が一方的に言いよっているだけか。
...そうだ、そうに違いない。明希の前であの男を殺してしまえば、明希もアイツに付きまとわれなくなるし俺だけを見てくれるはず。俺の明希と仲良くするとどうなるか、キチンと教えてあげないとな。
