第1章 ~ATOBE KEIGO~
プールから上がるとずぶ濡れの体に制服が張り付く
「もう…また制服濡らしちゃった」
「ちゃんと乾かしてやるって」
ふとプール脇のウッドチェアにタオルが二枚置いてあるのが見える
「ミカエルのヤツ…気が利くじゃねぇの」
景吾は口端を上げると、私の頭にタオルを被せる
(タオルが置いてあったってコトは…)
「っ…!?」
私は顔を一気に紅潮させ、タオルで顔を隠した
「どうした?」
「っ…景吾のバカ…」
「アーン?何で俺がバカなんだよ」
「知らないっ!!!」
景吾は理解したのか、私の頭をポンポンと撫でる
「気にすんな。ミカエルは出来た男だ」
「私が気にするのっ!!!」
「ったく…気にするならその格好を気にしろよ」
「?」
「前もだが…結構ヤラシイの付けてんじゃねぇの」
景吾は張り付いた私のシャツから透けるブラの線を指で辿った
「やっ!?」
「不可抗力だ。それに俺も気にする男じゃねぇ」
「…出来た男だね」
「当たり前だ」
私は皮肉たっぷりに言ってやったのに、景吾には通じない
「もう…」
私は小さくため息を吐きながら、胸の奥にモヤッとしたものを感じていた
家に帰ったあと、ベッドの中で今日の出来事を思い出す
送ってもらったミカエルさんは何も言わなかったけど、終始ニコニコしていて、何だか気恥ずかしかった
(てか私…キスしちゃったんだ)
景吾とのキスは初めてじゃない
だけど前のはお互いに無理やりって感じで今日のは…
私は今日のキスを思い出して毛布を頭から被った
何で…拒めなかったんだろう
何で…景吾は私に…
トクンと胸が高鳴る反面、モヤモヤともしてくる
気にしないって…
私、女として見られてない?
あのキスも雰囲気に飲まれただけ?
てか、何で私…モヤモヤしてるの?
「あーもう…寝ちゃおう!!」
私は毛布を被り直すと、次第に瞼を重くしていった