第1章 ~ATOBE KEIGO~
それは先日行われた関東大会、氷帝は初戦で優勝候補の青春学園に敗れた。
本来ならココで引退となる所だが、今回、全国大会の開催地が東京となった為、開催地枠として氷帝に声が掛かった
でもまだ景吾は返事をしていない
侑士曰く、プライドの高い景吾が承諾するのか…と言ったところらしい
「(景吾…らしいよね…)ミカエルさんあの…」
私が口を開いた瞬間、バシャンと大きな飛沫と水音が響いた
その音に目を向けると、景吾が服を着たままプールへと飛び込んだようで
「景吾坊っちゃん!?」
ミカエルさんが慌ててプールサイドへと駆け寄る
景吾はそれに目もくれず、水面に浮かんだまま遠くを見つめていて
「すぐに…すぐにタオルをお持ちします!!」
ミカエルさんは私に頭を下げると、早足で屋敷の中へと入っていった
入れ違いに景吾のいるプールへと歩み寄ると、私は靴と靴下を脱いでプールへと足を浸けた
「あー冷たくて気持ちいい♪」
「…?何でココに…」
景吾は立ち上がり少し目を丸くする
「ミカエルさんにお茶に呼んでもらったの。すごいね、プールがあるウチって服のまま入るんだ?」
「………そんなワケねぇだろうが」
そう言いながらも、景吾は上がる素振りも見せない
「…悩んでる?」
私の言葉に、景吾はまた水面に体を預けた
「やっぱりアイツらは…行きたいと思うか?」
「全国?そうだね~…でも皆、景吾の決めたコトには文句無いと思うよ?」
「ああ…」
「なんか景吾らしくないね」
景吾がに目線を移すと、は足をパシャパシャと遊ばせながら答える
「悪い意味じゃないよ?そうやって人に意見を聞くなんて珍しいなーって」
「お前、俺をどんなヤツだと思ってるんだよ」
「そうだね~…俺様で~自信家で~ナルシストで~…」
景吾は眉をひそめる
「なのに身内には甘くて…自分に厳しい」
は景吾を見やると微笑んだ
「いいんじゃない?たまには自分を甘やかしても…景吾はどうしたいの?プライド高く此処で終わる?それとも…」
「何だよ」
「何でもなーい♪」
は挑戦的に笑みを浮かべると、それ以上は何も言わなかった