第1章 ~ATOBE KEIGO~
「景吾さんたらテニスなさってるんですってよ。しかもかなり御上手だとか」
「まぁ、天は二物を与えずというのに…流石は跡部財閥の御子息ね」
「あら失礼よ。努力なさってるんでしょうに………」
ハッと目を開ける
見慣れた天井に、また夢だったと気付かされる
この間のパーティーで聴こえてきた会話。何故こんなのが夢に出てくるのかは想像がついた
始まった夏の大会で氷帝は都大会でダークホースの不動峰に敗れ、5位決定戦の末5位。関東大会には進めるものの、前年度の都大会覇者として後味が悪い結果になった
都大会までは準レギュラーで挑むため、この時はベストメンバーではなかったが、そんなのは言い訳にならねぇ
周りは、
”努力してきたのに残念ね”
とか、
”もっと努力すれば勝てる”
とか言いやがるから、もっと後味が悪い
努力努力って…
当たり前だろうが。誰だって上手くなる為に、自分自身の為に努力している
てめえらに言われる筋合いはねぇんだよ
強いヤツが勝つ
ただそれだけだ
「チッ…好き勝手言いやがって…」
俺は乱暴に毛布を捲ると、起き上がった
・
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「じゃあお先~」
「お疲れー」
関東大会の初戦の相手が判明してから、練習が今まで以上にハードになっていった
レギュラーの皆も疲労を隠せない様子で、今日もフラフラしながら帰っていった
私はそれを見送ると、部室の奥にある部屋で書類を整理した
(少しでも皆のサポートが出来たらな…)
私は相手校の過去の戦績をまとめる為、ペンを走らせた
暫くして…
「ん…」
いつの間にか顔をうつ伏していた私はゆっくりと顔を上げる
(寝ちゃってたのか…)
目を擦りながら掛時計を見やる
「うっそ!!もうこんな時間!?」
私は慌てて机の上を片付けると、部室を出た
すると、横のコートからラケット音が聞こえる
(まだ誰かいるの…?)
私はコートの方に向かっていった