第1章 ~ATOBE KEIGO~
それから私は景吾の家に連れて行かれ、お風呂に食事と至れり尽くせりな扱いを受けた
「はぁ…お腹いっぱい♪ごちそうさまでした」
デザートを最後の一口頬ばると、私は満足気に息を付いた
「そりゃ良かったな」
コーヒーを飲みながら景吾が笑みを浮かべる
「ホント何から何まで…ありがとう」
私は綺麗に仕立てられたワンピースの裾を握る
「こんな綺麗な服まで用意して貰っちゃって…何かお嬢様になった気分?」
「こんなの普通だろうが」
「普通じゃないよー?あ、まぁ景吾にとってはそうかもしれないけど」
ニコッと笑みを浮かべていると、景吾が立ち上がり、私の隣に来るとしゃがみ込む
そしてグッと顔を近付け、覗き込んできた
「じゃあ…教えろよ」
「ぇ…?」
「その庶民ってヤツのデートってーのを」
「デートって…そもそもこれデートなんかじゃ…」
「アーン?イヤなのかよ」
「イヤとかじゃないけど…」
「そしたら今日のコトは見なかったことにしてやる」
「………分かった。じゃあ今度部活が休みの時でどう?」
「ああ」
そう言って笑みを浮かべた景吾の顔はいつもと違い穏やかに笑っているような気がして
トクン…
(あ、あれ?なんか……)
私は胸の奥がむず痒い感じがして仕方なかった
「本当にありがとう。また明日ね」
「ああ」
暫くして、キレイにプレスされた制服を受け取り、は車へと乗り込もうとする、が…
「……景吾?」
の腕を掴み、帰るのを制するような仕草
「…いや、何でもねぇ」
「変な景吾♪」
手を離すとは困った様に笑い、車で去って行った
「チッ………」
自分の意思にそぐわない行動に舌打ちをすると、眉を潜める
家へと入って行く中、今日のコトを思い出す
は何も言わねぇが、十中八九他のヤツらの仕業だ
だがアイツはケロッとしてやがる
(犯人を庇っているのか?それとも…)
アイツの躰には傷なんてなかった
むしろ綺麗で…
そこまで考えてハッとする
(俺は…何考えてんだ)
ハァとぞんざいに息を吐くと、使用人の一人に声を掛ける
「おい、調べてぇコトがある」