第1章 ~ATOBE KEIGO~
「誰でもないよ。それに埒が明かないのはこっち…この状況分かってる?私下着姿なんだけど。このまま襲うつもり?」
わざと挑発して気分を削ぐつもりでいた
頭がいい景吾は絶対に乗らないと思っていたから
「そうだな…」
景吾の手がロッカーから離される
だが、次の瞬間には両手を縫いとめられる
「!!」
「なら…お望み通り襲ってやるよ」
景吾の低い声が耳元で囁かれ、耳たぶを食まれる
「っ…ぁ…!?」
「耳弱えのか…」
フッと息を漏らすと、今度は首筋に舌を這わせる
「やっ……ぁ……」
「誰にやられた?言わなきゃ辞めねぇ」
「!?」
「言えよ」
「っ………」
私は唇を噛みしめると、縫いとめられている手の力を抜いた
景吾の動きが止まり、視線が合わさる
「言うことなんて何もない…ヤりたきゃヤれば?」
少しの沈黙の後、手が解かれ自由になる。そして景吾がブレザーを脱いだ
「っ………!!」
私は思わずギュっと目を瞑ると、バサッと音がして暖かさに包まれる
「………?」
目を開くと、景吾のブレザーが自分の肩に掛かっていて
「着ろ」
「ぇ…」
「そんな姿じゃ外も歩けねぇだろうが。それに…震えてる女抱く程、女に困っちゃいねぇからな」
そう言うと、景吾は携帯で連絡を取り出した
私は…自分の掌を見つめる
微かに感じ取れる程の震え
(私…)
ギュッと掌を握り締めると、景吾を見る
景吾は電話を受け答えながら、頭をポンポンと撫でてくれた
「っ………」
私は気恥ずかしさでいっぱいになり、睫毛を伏せる
私の強がりが、強情さが景吾を踏み込ませないようにした
なのに気遣ってくれる優しさに、胸が締め付けられる
(ありがとう…)
私は心の中で何度も何度も呟いた