第16章 小さな手
本当は遠くに行きたくない。
「うちは」の街は異様な空気だ。特にここ半年間緊迫した雰囲気が広がっていた。うちは一族の血筋以外の人間が、この街に足を運ぶのを、現在では原則禁止している。
暗部ろ班隊長のカカシと言えど、「うちは」に入る為に、数枚の許可証が必要だ。
ただ、三代目猿飛ヒルゼンやダンゾウなどの、上層部は例外だ。ただ形式的な書類はいる。
今回の花奏は赤子といえど、特例だった。
今日は、すんなり入れた。嫌な視線は集まっていたが、それでも何も紙を書いていない。
それは、イタチが赤子を認めないのならば、「暗部を辞める」と、はっきりと両親に伝えたからだ。
さらに「忍も辞めて良い」とイタチは断言した。さすがにフガクもミコトも動揺する。
話を聞けば、力もなく、喋ることもできない、産まれて数カ月の赤子だ。情報が出るわけではない。
フガクとミコトは
了諾する以外、道はなかった。
怪しむ視線が、いたたまれない。