第16章 小さな手
自室のドアを閉め、イタチは浅く息をはいた。自分のベッドの横に、サスケが赤ん坊の頃に使っていたベビーベッドが置かれている。
花奏をベッドに寝かせた。木の柵に囲まれ、柵の端に、可愛いメリーが、くるくるとオルゴールの音色を奏でて回る。ウサギやキリンなどの可愛い動物がメリーに飾られている。
うとうと……、目を瞑りそうな花奏の頬を優しく撫でていれば、もう眠りにつきそうだ。網目のボールから指を一本ずつ離し、そっと取り、木目調の机に置いた。
「先ほどのオレ……、怖かったですよね。すみません……」
イタチは20歳の花奏に
話しかけるように静かに喋り始めた。
「花奏さん……、ヤナギさんの件は残念でしたね。オレは……あなたの媚薬に乱れた姿を見てから、心がずっと……ざわめいている」
あなたに……と、黒い髪をかきあげたイタチは続ける。
「特別な感情など持っていないと思っていた……。 今ではヤナギさんの気持ちや、……カカシさんの気持ちがよく分かる」
目を閉じて、スヤスヤと眠りについた花奏。イタチは布団からはみ出た小さな手を、布団の中に入れた。そのとき、幼い指が当たり、イタチは人差し指を赤子の手のひらにおいた。
すると、イタチの指を花奏は
ぎゅっと握った。
イタチは、握られた指の感触に、ふっと笑い、赤子と同じ高さにかがんだ。
「ブレてはいけない……。そう思うのに……オレは今、いちばん……心が揺れている……」
深い息を吐いたあと、イタチは、優しくあたたかい表情で、反対側の手のひらで、柔らかな髪を撫でていた。