第16章 小さな手
翌日の早朝。
カカシとテンゾウは、うちは一族の住宅街に入る門前にいた。暖簾には、うちは一族のシンボルが、大きく掲げられている。
テンゾウは大きなボストンバックを持ち、花奏はカカシが抱く。
花奏は、目をキョロキョロとさせた。どこにいるのか、不安なのか、はたまた興味津々なのか。どちらかと言えば後者の方が強い様子だ。
「イタチ……なにかあれば、すぐに連絡をくれ。すぐに向かうからね。あと、さっきミルクあげたところで、オムツも見たところだし、大丈夫だと思う。あと、大きな音に敏感だから静かな声で頼むね?明日の昼には戻るから。あ、絶対目を離しちゃダメだからな。落とすなよ?」
「カカシ先輩……、それ、さっき聞きましたから…もう3回目ですよ」
並んで立つテンゾウは、げんなりした顔でカカシを見た。昨日は散々、余裕ある姿をしていたのに、今はない。
暗部の任務も、さっさと片付けようしている。見なくても目に見えていた。この後ダッシュで現場へ向かうはずだ。
カカシは、花奏を誰にも触らせたくない。その思いは変わらない。風呂にも昨夜、共に入った。
赤子の可愛い姿にカカシは、ぞっこんだった。身を引き裂かれるようで、カカシは今、猛烈に離れがたい。苦々しい表情で赤子を抱いている。
「イタチ……頼むね……」
カカシは、大きく溜息をはいて花奏をイタチに近づいた。
任務だ。致し方ない。何度も何度も頭に言い聞かせて、朝を迎えた。速攻で仕事を終わらせる。カカシの目は、決意を表したように真剣だった。
イタチは、そんなカカシに小さく苦笑いを浮かべ、テンゾウの大きな荷物を肩に担いだ。
「大丈夫ですよ。任せて欲しい。オレの家族にも伝えてありますから」
そう伝えて、カカシから花奏を受け取った。
「あう、あうあーー…」
「なにか言ってますね」
イタチは穏やかな表情で花奏を見つめた。
カカシはその姿を眺めて、ふぅと息を出した。
「イタチ、頼んだからな。 よし、行くよ、テンゾウ」と部下の肩を叩いた。
「はい、カカシ先輩!」
2人は瞬時にその場を離れた。