第16章 小さな手
「あーー、疲れた。 悪いねー、テンゾウ」
カカシとテンゾウ、そしてパックンは、カカシのアパートへと戻った。
大量の荷物だ。テンゾウに持ってもらった。
ベッドの横にベビー布団を先に敷いた。起こさないように、そっと花奏を布団の上に寝かせた。
横になったとき、身体をくねらせて、目をかいたりしている。
パックンが布団をくわえて、花奏の胸の位置までかけた。
「ふにゃ……」
一瞬、声が聞こえた。起きるか……と、みんなで眺めていたが、また徐々に動きは鈍くなった。再び、眠りについたようだ。口が少し開いている。
パックンは花奏のとなりで丸くなり、目を瞑った。パックンもお疲れのようだ。
カカシは腰を上げて、キッチンに向かった。冷蔵庫から、アイスコーヒーを取り出し、コップに注ぎ、食卓に腰掛けたテンゾウに渡した。
「荷物を持ってくれて悪かったね。テンゾウ。色々助かったよ」
「あ、いえ……。カカシ先輩、明日任務ですよね。ボクもですが……、さっそくイタチに任せて大丈夫ですか? 」
テンゾウはアイスコーヒーを飲んだ。ブラックだ。甘いのが好きではないカカシ。飲み物に砂糖やミルクを入れる習慣はない。苦い顔でカカシを見た。
「んー、ま、大丈夫でしょ? 弟のお世話をしていたって言ってたからね」
うちは一族は、なにかとトラブルを抱えがちだ。カカシはダンゾウから推薦されたイタチを、暗部の仲間として受け入れた。
「そう……でしょうか。 うちは一族の木ノ葉警務部隊から、最近良い噂が聞こえてきませんが……」
テンゾウは、言いにくそうに話し、アイスコーヒーを飲みきった。
近頃、うちは一族が住む住宅地に、「うちは」以外の人間が立ち入ろうとすれば、荷物や服装など厳しいチェックが入る。
ピリピリした不穏な動きだと、暗部や木ノ葉の忍では不審がられていた。
「まー、いくらなんでも、赤子には手を出さないでしょ。花奏を見つめるイタチの表情は、優しかったよ」
カカシはそう言い、コップに入ったアイスコーヒーを同じように飲んだ。うん、美味い。やっぱブラックでしょ。カカシはテンゾウに目を細めて見つめた。