第16章 小さな手
「売った……!? つまり……他にも渡した奴がいるということか?」
カカシは、なんとか声を押さえた。
自分の腕の中で眠る花奏が起きないように。気持ち良さそうに寝息をたてる。そうは言っても、カカシの心は騒ついた。
強力な媚薬だった。
犯罪に決して使われてはいけない。
花奏は暗部の忍。毒や媚薬に関し、一定の耐性は付いている。
鍛錬された忍さえ、理性が吹き飛ぶほどの猛毒だった。解薬剤はいっさい効果なし。
その脅威の薬が、万が一。
安易に、庶民や耐性のない人間の手に渡り、服用されてしまった場合、非常に危険だ。効果が強すぎて錯乱し、精神崩壊、もしくは身体が耐え切れず、死に至る可能性すらある。
カカシは硬い表情で、イタチを見つめた。
「誰に売ったか、ビンゴブックの男から、ほかの証言は得られたか? 」