第16章 小さな手
猿飛ヒルゼンは、テンゾウに、赤子用品にかかった費用を渡したとき、ふと…床に目がいった。
「なにか落ちておるぞ。なんじゃ、それは?」
指をさした方にテンゾウは顔を向けた。封筒だ。かがんで手紙を拾う。ただの白い封筒。表には綺麗な字で花奏へと書かれていた。
「ああ……、それはヤナギから花奏への手紙です。個人宛なモノなので、三代目にお渡しはしていません」
と、カカシは静かに伝え、テンゾウに視線を向けた。
「悪いけど、そこの鞄の内ポケットに、手紙を入れておいてくれる?」
顎で位置を示した。ソファにもたれかかるトートバッグを。
花奏を抱っこした状態だ。カカシの両手は、今ふさがっているのだ。
「ああ、はい、了解です」
テンゾウは快諾し、トートバッグを掴んだ。中を入れようとするが、中身はパンパンだ。任服が押し込まれ、靴も入っている。
「本当に……花奏先輩なんですね……」
現実を突きつけられたような気持ちだ。ほんの1、2時間前まで焼肉の話を交わした。今、花奏は赤子の姿に変わり果てている。テンゾウは辛そうな表情で手紙を入れた。
すると、猿飛ヒルゼンが、「そうじゃ」と言う。
「テンゾウよ、先ほど…なにか言いかけていたであろう。なんじゃ?」
テンゾウとイタチに、猿飛は目を向けた。テンゾウは、「ああ!そうでした」と慌てて立ち上がった。
「ビンゴブックに載る男から情報を得ました。 詳細はイタチが聞いています」とテンゾウ。となりに立つイタチに視線を送った。
「花奏さんに、盛られたであろう媚薬は、ヤナギさんに売ったと証言しました」とイタチは、はっきりと話した。