第2章 もしもの話 *ジャン 切/甘
ああ、やっぱり。
"もしも"を真剣に考える彼はとても可愛い。
「だが、お前を運ぶなんて役目も務まりそうにねえ」
『じゃあどうするの』
うーん、と暫く唸る。
もう一度笑いがこぼれそうになったが、次こそバレてしまいそうなのでこくんと飲み込む。
「じゃあ、俺は」
『うん』
「の追い風になるよ」
『追い風?』
「そう、お前の決めた方へ
の目指すところへ
俺が、力を添えたい」
『……ふふ、ありがとう』
でもそれなら別に、風のままでいいじゃない。
そんなことを思ったが、少し頬を染めながら言った彼には秘密にしておいてあげる。
『好きよ、ジャン』
どこまで続いているのか、どこに終わりがあるのか。
そんな空を見上げながら呟く。
昔彼が友人に言われた、その時何をするべきかを判断できる能力。
彼は今その能力を使い、同期の中で司令塔のような役割を担っている。
でも、もしも…
私が鳥で、彼が風で。
そんな穏やかな世界になったなら、肩の荷を下ろして、ただ静かに漂っていてくれればいい。
彼が"風"と言ったとき、本当はそう思ったのだけれど。
私はひとりでも飛べる。
彼も、ただ漂うことができる。
それでも、私の追い風になりたいと彼は言う。
そんな彼の甘さに絆されてしまったのはいつからだっただろう。
だけど、それはまだ。
「ハァ…」
顔は見ずともわかる。おそらく、もう何度も見てきた顔だろうから。
「お前それ本気で言ってんのか冗談なのか、いい加減ハッキリしろよ…」
『本気だって、いつも言ってるでしょ』
「…そこまで含めてわかんねえんだよ」
『ま、どっちでもいいじゃない』
「良くねえ」
『良いの。そういうことは、鳥と風になってからでも遅くないよ』
「ハァ…」
結果いつもと変わらない返答に本日何度目かの溜息を吐いてから、彼は寝の体制に入ったようだ。
柔らかい髪の毛が脚の布越しにしか感じられないのがもどかしくて、頭に手を滑らせる。
ふわふわと風に踊る髪を指に絡めながら。
『いつかゆっくり、ふたりでね』
<もしもの話 fin.>