モデルのボーダー隊員(前のストーリーとは少々異なります)
第15章 金の雛鳥と弟
地面に突き立てた刃から、一瞬の内に光が走る。
瞬きの一瞬の隙すら赦さない光速斬擊で、爺さんの体は真っ二つになった。
「!?」
「言ったろ?「動く隙もなく終わる」って」
「いやはや、このような黒トリガーは始めてです」
「これは唯一無二の黒トリガーだからな。見たことあったらこっちがビックリだ。じゃあな爺さん、さっさと帰れよ」
そう言ってその場を立ち去ろうとすると、爺さんに止められる。
「私を殺さなくてよろしいのですか?」
「何で殺す必要があんだよ。爺さんは俺に殺されてぇの?」
「私は貴女からご家族を奪いました。任務とはいえ貴方の心に傷を着けてしまいました」
この爺さんバカなんだろうか?思わずハァと大きなため息が出る。
「だからどうしたってんだよ。確かに傷付いたし、さっきは取り乱したりもしたけど、蓮琉は生きてるし、後の2人も生きてんだろ?だったらあんたを殺す必要ねぇだろ。「殺す」って行為は、新たな憎しみの発生装置だ。無駄に血ぃ流すような、何の特にもなんねぇ事はしたかねぇよ」
「!」
「爺さんは寿命も近いんだし、今ここで俺に殺されるんじゃなくて、戦士なら戦士らしくもっと上の敵に殺されて死ねよ」
「...ありがとう...ございます」
「おう、じゃあな爺さん。今度会った時はゆっくり茶でも飲もうぜ」
そう言って俺はその場を去り、蓮琉達の所へ向かう。会議室で見た遊真の未来とは別になったが、これはこれでいい未来へ向かっていると信じよう。
蓮琉達の所戻ると、こちらも既に終わっていた。流石太刀川さん。
「よう、全員お疲れ」
「姉さん。ヴィザ翁に勝ったのか?...殺したのか?」
「殺してはない。ってか、殺す必要ねぇし。蓮琉も、身内が人殺しなんて嫌だろ」
「そんなことで姉さんを嫌いにはならない。...でも、ありがとう」
あぁ、久し振りに会った弟がこんなにも可愛い。最高。
「おいシュウ、今から本部に行くぞ。お前を保護するよう指示が出た」
「行かねぇよ。本部に隠れたって敵が撤退しなきゃ何の意味もねぇだろ。だったら戦場に出て敵をこっちに集中させた方がいい」
俺の意見に誰も反論しない。と言うか、俺がこう言う事をわかっていたって顔だ。
「お前らな...」
「シュウならそう言うと思ってたぜ」
「サポートは任せてください」
「頑張りますから!」
「ありがとな。3人とも」
