モデルのボーダー隊員(前のストーリーとは少々異なります)
第15章 金の雛鳥と弟
明希視点
太刀川さんに宥められて何とか落ち着く。あのお爺さん、僕の大事な家族を浚った内の1人のようで、それを知ったとたんに怒りが込み上げてきた。
人の家族を浚っておきながら、堂々と僕の前に現れるんなんていい度胸だ。
「...お爺さん、僕の相手になってよ。蓮琉の事はここの3人に任せておけば僕は安心だし。その澄ました顔、歪ませてやるよ」
6年分の怒りが胸の内から溢れ出る。落ち着いてはいるけれど、今の僕にはお爺さんしか目に入っていない。
「とんでもない殺気だ...怒らせるのはまずかったようですな。貴女のお相手、喜んでお受けいたします」
そう言ったお爺さんは蓮琉達の場所から離れ、場所を帰るように誘導する。
「...この辺りならよろしいでしょう。お互いに、派手にやっても誰も傷付けるおそれはない」
「そりゃありがたい。配慮感謝するよ、爺さん」
移動の際にまた入れ替わった俺の口調に、爺さんが少し違和感を感じているのがわかる。SEの方も良好なようだ。
「さっさと始めようぜ!!」
言い終わるより速く爺さんとの距離を積め、雷刃を突きつける。
爺さんは持っている杖を器用に切っ先へ当てて、攻撃を防いでいる。
「器用だな爺さん」
「お嬢さんも動きに迷いがない。いい腕をしていらっしゃる」
嫌みにしか聞こえねぇっての。イライラしてくんなこの爺さん。
爺さんから距離をとる。
「貴女ほどの手練れ相手なら、私も全力で戦えそうですな」
今まで様子見かよ。随分と余裕じゃねぇか。まぁ、俺も雷刃の能力を未だに使っていないし、お互い様だ。使ったら動く隙もなく終わってしまう。
「使わないのですか?」
「爺さんの黒トリガーの能力によっては、使わざるを得なくなるけどな」
「ならば使わせていただきましょう。【星の杖】」
爺さんが呟くと円の軌道上に刃が走る。
こりゃ厄介だな。超近距離じゃなけりゃ直接攻撃は出来ない。特に薙刀は柄が長い分の距離をある程度取らなくてはならない。相性はあまり良くない。
しかし、それは別に気にしなくていい。雷刃の能力は遠距離の光速斬擊。どんなに強い黒トリガーだろうと、全く関係ない。
雷刃の刃から光の帯が出る。それを地面に突き立て、爺さんを見据える。
「わりぃな爺さん。その黒トリガーにはこれが1番有効だわ」