第11章 本部精鋭部隊と雷刃

迅視点

「きちんとした説明が欲しいですね。城戸さん？」

そう言った明希からは尋常じゃないプレッシャーを感じた。大分怒ってるなこれ。

「遠征で疲れて帰って来てるのは私達だって知っている。だが、黒トリガーに対抗できるのは精鋭部隊だけだ。彼らも任務を承諾した」
「そりゃ、上司の命令ですからね。断り難かったんでしょう。それに黒トリガーが野放しにされている状況は自分達にとっても許せる事ではなかった。だから承諾した。城戸さんはここまで全て読んで利用したんでしょう？実際、今夜にしようと言い出したのは太刀川さんですし」

城戸さんが何故それを知っていると言わんばかりに明希を睨む。それでも明希は怯むことなく話を続ける。

「僕のSEを使えば直ぐにわかりますよ。それとも、今回の襲撃自体がバレないとでも思ってたんですか？僕ら相手に？...ふざけるのも大概にしてくださいよ」

明希の声のトーンが下がった。明希がガチギレした。

「黒トリガーは人の命と引き換えに出来るものだって知ってるでしょ？遊真君にとって、それはお父さんなんだよ？何故奪うような事をするの？パワーバランスがそんなに大事？命よりも大事？パワーバランスを気にする必要が何処にあるの？しかも、遠征から帰ってきたばかりの人間を使ってまですること？それでも僕ら隊員の上に立つ人間なの！？...ホントあり得ない」

明希が俯いて「昔の優しかった城戸さんはもういないんだね」と呟いた。
ずっと一緒にいた俺だって、城戸さんの変わりようには驚いた。あのときは城戸さんが本当に城戸さんなのかわからなかった。違う人なんじゃないかと思うくらいには変わってしまっていた。
城戸さんは黙ってこちらを見ている。何も言い返せないようだ。

「明希、説教はこれくらいにして交渉に移ろう。今やらないとダメなんだろ？」
「うん。...切り替えて、次は交渉に入ります。まず、城戸さん。これからも遊真君の黒トリガーを狙い続けますか？」
「あぁ。何と言われようとも、黒トリガーは我々が手に入れる」
「そうですか。なら、僕自身と僕の黒トリガーを本部所属にする事を条件に、遊真君の黒トリガーを狙わない事とボーダーへの入隊を認めてほしい」

大人達が「僕の黒トリガー」という言葉に驚いている。そりゃそうだ。まだ言ってなかったからな。

「まず、僕の黒トリガーについて説明するよ」