第11章 本部精鋭部隊と雷刃

悠一が秀ちゃんに有無を言わせない物言いをする。
しかし、太刀川さんは正式な隊員じゃないと否定する。

「玉狛での入隊手続きが済んでても、正式入隊日を迎えるまでは、本部ではボーダー隊員と認めていない。俺達にとってお前の後輩は、1/8まではただの野良近界民だ。仕留めるのに何の問題もない」
「へぇ...」

言ってることは滅茶苦茶だが筋は通っている。ラウンジで聞こえたあの声はおそらくこの人だ。

「邪魔をするな迅。お前と争っても仕方がない。俺達は任務を続行する」

風間さんが眈々と話し始める。

「本部と支部のパワーバランスが崩れることを別としても、黒トリガーを持った近界民が野放しにされている状況は、ボーダーとして許すわけにはいかない。城戸指令はどんな手を使っても、玉狛の黒トリガーを本部の管理下に置くだろう。玉狛が抵抗しても、遅いか早いかの違いでしかない。大人しく渡した方がお互いのためだ。...それとも黒トリガーの力を使って本部と戦争でもするつもりか？」

風間さんの話長い。危うく寝そうになったじゃねーの。

「城戸さんの事情はいろいろあるだろうが、こっちにだって事情がある。あんた達にとってはただの黒トリガーだとでも、持ち主本人からしてみれば命より大事なものだ。別に戦争するつもりはないが、大人しく渡すわけにはいかないな」

ねぇもういいじゃん。戦った方が早いって。そう悠一に伝えてみるも、「もう少し待って」と言われて大人しくする。

「あくまで抵抗を選ぶか...。お前も当然知ってるだろうが、遠征部隊に選ばれるのは、黒トリガーに対抗できると判断された部隊だけだ。他の連中相手ならともかく、俺達の部隊相手にお前１人で勝てるつもりか？」

悠一じゃなくて俺なら勝てるよ。マジで早く戦いたい。

「俺はそこまで自惚れてないよ。遠征部隊の強さはよく知ってる。それに加えてＡ級の三輪隊。俺が黒トリガーを使っても、いいとこ五分だろ」

悠一が間を少し空け、口角を上げる。

「「俺１人だったら」の話だけど」
「何...！？」
「出て来ていいよ」
「遅ぇよ。どんだけ待たせんの？」

悠一に呼ばれて、屋根の上から飛び降りる。思わず欠伸が漏れる。
待ちくたびれたんだけど。

「...誰だ！」

秀ちゃんが凄みを効かせて聞いてくる。わりぃけど、全く怖くないんだわ。

「ん？シュウだけど？」
『！？』