モデルのボーダー隊員(前のストーリーとは少々異なります)
第9章 三輪隊と黒トリガー
「それに、近界民全部が悪い奴とは限らないでしょ?」
そう言うと、秀ちゃんは驚いた顔で僕を見る。
近界民全部が敵ではないと言う言葉が信じられないようだ。
「実際、遊真君はこっちを攻めに来た訳じゃない」
「だが...」
「遊真君が何かボーダーにとって困るような事した?」
そう言えば秀ちゃんは言葉を詰まらせる。しかし、頑なに認めようとはしない。
「攻めに来た訳じゃないのに、何故排除されるの?いきなり攻撃されるの?遊真君はお父さんの故郷に来ただけだよ?」
「父親の故郷だと?」
三輪隊が驚き、遊真君は少し警戒する。
「...フジサキサン、何でそれを知ってるんだ?俺、その話してないぞ」
「僕のSEだよ。人の心が読めるんだ」
再び悠一以外の全員が驚く。まだ玉狛の人にしか言ってなかったし、知らないのも当然だ。
「だから遊真君がこっちに来た目的もわかるよ。でも、それは本人の意思で伝えたい人にだけ伝えたら良いと思うよ。だから僕の口からは言えないし、言う気もないから安心してね」
その言葉が嘘じゃないとわかったのか、遊真君の警戒がとける。
しかし、秀ちゃんは認めなかった。
「父親の故郷がここだと?それが本当だとしても、そいつが近界民である事には変わらない!」
「遊真君は悪いことしてない。これ以上、遊真君に酷い事するなら、僕が相手になる」
「明希1人でか?俺達全員相手に勝てるのか?」
「勝算が無かったらこんなこと言わない。取り敢えず、今日はもう帰って」
そう言い放つと、秀ちゃんは緊急脱出していった。
陽介君達はこのまま歩いて帰るそうだ。
「わりぃな明希。秀次も悪気があるわけじゃ無いんだ。それが正しいって思い込んでるだけなんだ」
「わかってるよ。僕も、少し言い過ぎたような気がする」
「いや、あれくらい言ってくれた方がアイツにとって良いかもしれない。少しは考えるようになるといいんだけどなぁ」
陽介君は秀ちゃんにもう少し丸くなってほしいと思っているようだ。
「陽介、そろそろ行くぞ」
「おう!じゃ、明希またな!」
手を振って奈良坂君達の所へ行き、そのまま帰っていく。
僕も遊真君や悠一の方へ戻る。
「さて、俺達も本部に行くか。三輪隊だけだと報告が片寄りそうだからな」
「僕も行きます。また何か聞かれそうですし」
そうして報告のために3人で本部へ向かった。
